第16話 エピローグ
「ぎゅるるるるるるる……」
森のなかを歩いていた僕たちが出会ったのは、お腹をすかせた【ピッグオーク】だった。
豚の頭のついたオークだ。
ピッグオークは大きなお腹を上下に揺らしながら、よだれをダラダラ垂れ流している。
「リコ、さがって」
僕は一人でそれを迎え撃つ。
ピッグオークは、大人でも苦戦するくらいの相手だ。
村の大人たちが昔、何人も殺されたりしたっけ……。
でも、今の僕なら楽勝だ。
クロウヘッドに比べれば、こんなのアリみたいなものだ。
「うーん、さすがに手加減しなきゃだな。よし《Lv2ウィンドブロウズ》――!」
――ズゴゴゴゴゴゴゴ!
僕の手から放たれた風の砲丸は、オークの頭蓋を一瞬で粉々にした。
うへぇ……ちょっとグロい。
「トン! すごい! まさか本当に、ここまで強くなってたなんて!」
「リコのおかげだよ。君を守るためだから、僕はここまで成長できたんだ」
「ありがとう、トン」
道中に出くわしたモンスターたちは、このように僕が蹴散らしてきた。
最早普通のモンスターなら敵にならないな……。
レベルは12まで上がっていた。
だけどまだ特に苦労することはないから、スキルポイントはそのままにしている。
「そろそろ休もうか」
「そうだね」
ここまで数時間歩いた。
もう日が落ち始めている。
この調子なら、数日のうちにどこかの街へ着くだろう。
商人のキャラバンとも何度かすれ違ったしね。
「トン……」
リコが頬を紅潮させ、うるんだ目で僕を見る。
まるでなにかをねだるように。
「どうしたんだい?」
「その……ほんとに、トンが生きていてよかった。私、もう会えないんじゃないかって……」
そう言うとリコは急に泣き出してしまった。
それだけ心配してくれていたんだね……。
確かに、僕に死に戻りのスキルがなければ、本当にそうなっていた。
僕も、改めていまの幸せをかみしめる。
また、生きてリコと会えた。
そして、いっしょに村を出て、旅ができるなんて……。
「大丈夫だよ、リコ。もうどこにも行かないから。僕らはずっと一緒だよ」
リコを優しく抱き寄せて、キスをすると、震えが止まり、泣き止んでくれた。
もう一生離したくない。
僕は2度も死んで、ようやくこの状況を勝ち取ったんだ。
その後、僕らはお互いの存在を確かめ合うように、強く求めあった。
リコと肌を重ねるのはこれで2回目となる。
祭りの夜のことは、どこか夢見心地で現実感がなかったけど……。
今回はしっかり、リコの存在を感じとれた。
僕らは今、
確かに生存して、動いている。
――――――――――――――――――――――――――
森の中で、二人で野宿する。
まあ、リコと二人ならこういう旅も悪くない。
簡単に寝床をつくり、そこで寄り添い合って眠る。
お互いの体温で安心し、そうしているうちに自然と寝入る。
深夜になり僕は突如、あまりの寝苦しさに目を覚ました。
リコはまだ隣でぐっすり寝ている。
おかしい……なぜこんなに寝苦しいんだ?
「ぐあああああああああああああ!」
胸が苦しい。
まるで内側から、なにかが出たがっているかのような……。
きっと【僕の心の扉】が開きかけているんだ。
けど今までこんなことはなかった。
僕が一度カギを開けたことで、
「トン、大丈夫!?」
大声を出したせいで、リコが起きてしまう。
僕はなんとか平静を取りつくろい――。
「だ、大丈夫だよリコ。少し、寝苦しかっただけさ」
「ほ、ほんと……? 顔色がすごいけど……」
「へ、平気だから……ぐ、うわああああああああああああああああ!」
「トン!?」
だめだ、内側から何かが湧き上がってくる。
抑えられない……!
「リコ……?」
僕はそのとき、リコがとんでもない表情をしていることに気がついたのだ。
まるで、そう……あのときの
だけどそれとは違う、僕を心配している目でもある。
そういった、とても複雑な感情が混じり合った顔だ。
「トン……あなた、自分で気づいていないの……?」
「え? なにが……?」
僕は言われてようやく気がつく。
自分の手をふと見ると――。
「トン、あなた……半魔になってるわ……」
僕の右手は、
そう、まさにこれは――悪魔、魔族、そういった呼び名がふさわしい。
「リコ、ごめん……どうやら僕にはもう、時間がないみたいだ」
◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇
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・
To Be Continued――――?
◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇
――――NOW LOADING......!
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