3−5
カーテンのように、光が揺れている。
水の中。
わたしは〈海〉にいる。
苦しくはない。
一人で?
違う。誰かと。
誰と?
あの人と。
わたしは、彼女に連れられ、この〈海〉へ来たのだ。
彼女は泳いでいく。水棲生物のように、しなやかに身をくねらせながら。
いや。
彼女は水棲生物なのだ。
真っ白い、イルカの姿で、尾鰭を上下させている。
わたしはそれを追いかける。追いかけようとする。必死で、もがく。
もがいても、もがいても、追いつけない。
彼女は見る見る行ってしまう。
待って、とわたしは叫ぶ。声は出ない。彼女にわたしの気持ちは届かない。
彼女は見る見る行ってしまう。
だが、ふと泳ぐのをやめてこちらを振り返る。
彼女は、彼女の声でわたしを呼ぶ。
「ナギ」
突然眠りから放り出され、自分がどこにいるのか上手く理解できなかった。
部屋の中は暗い。ブラインドの隙間から辛うじて光が漏れているが、太陽のそれとは違う。時刻を確かめると、午前三時を回ったところだ。
『ナギ』首に巻いた端末から、さっきと同じ声がする。違う。クラウスの声。『状況が変わった』
「何が起きたの?」
『彼らが現れた』
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