第2話 質問とカップラーメン

 勢いで連れてきてしまったが、よくよく考えてみると、知らない女性を家にあげるのは、まずかったかもしれない。

 見られてやましいものは無いと思うが、世間的に、ヤバいかもしれない。


「ねぇ、アンタ家族は?挨拶とかしたいんだけど」


 少しびっくりした、さっきまでの態度とは思えないほど礼儀正しいと思ってしまった。


「一人暮らしだから、俺だけだよ」


 実家から離れて、高校に通っているので、この部屋には優1人で住んでいるのだ。


「はっ?それって、この部屋にはアンタと私の2人だけって事?」

「まぁ、そうなるな」

「信じらんないっ!アンタそれでよく身体目的じゃないって言えたわね!」



 ゔっ、と言葉が詰まる。それを言われてしまっては何も言い返す事ができないのだ。

 だからといって身体に興味はない。


「本当にバカだわ」

「仕方ないだろ?俺も必死だったんだから」

「必死ねぇ〜」

「なんだよ」


 女性は下から上に視線を徐々に上げて行く。


「まっ、そういう事にしといてあげるわ、あっ、後触ったり、不用意に近づいたりしたら警察に言うから」

「分かったよ、何もしない」



 善意で連れてきたので、最初からそういう目的は頭にはなかったのだ。手を出すなんてありえない。



「なぁ、アンタ名前は?名前くらいだったらいいだろ?」

「本当は嫌だけど、いいわ、私の名前は、西条恵さいじょうめぐみ、よろしくしたくないけど、1日よろしく」



 名前を聞くと、まぁ、しょうがないか、という感じで、しぶしぶ名前を言ってきた。


「ほら、アンタは?」

「えっ?」

「人に名前聞いといて、えっ?はないでしょ」

「あぁっ、俺は桐島優、高校生だ」


 高校生それを聞くと、少し驚いたようにこちらを見てくる。


「高校生なの?じゃない」


 それを聞いて、思わず飲んでいた麦茶を吹き出す。


「ゲホッゲホッ、ちょっと待て、今まで20を過ぎてると思ってたんだが、」

「そんなに歳とってないわよ!」


 と少し怒鳴られて、汚いからテーブル拭きなさいと、ティッシュを渡される。


 綺麗にテーブルを拭いた後に、もう一度ちゃんとその女性を見てみる。


 顔はパーカーのフードでよく分からない、身長は平均身長くらいだ。


「いつまで、フード被ってるんだ?」

「良いでしょ別に!私の超絶可愛い顔を見たら、襲ってくるかもしれないじゃない」

「どんだけ、信用されてないんだよ」

「当たり前でしょ?!女子高生を男子1人の部屋に連れてくるなんて」



 確かに信用されないのなんて、当たり前の事だ。しかし、顔くらいは見ておきたいと何故か思ってしまった。


 「・・・ねぇ、アンタ、アイドルとかってよく見る?」


 いきなり、こんな事を聞いてきた。さっき名前を教えたのにもかかわらず、まだアンタ呼ばわりだった。


「見ないけど、名前教えただろ」

「信用できない奴なんて、アンタで十分、で、本当に見ないの?最近話題の高校生アイドルとかも?」

「誰だ、ソイツ、全く知らない」


 ニュースはまだしも、アイドルには興味がないので、そういう知識に関しては全くないのだ。


「じゃあ、見せても良いかもね・・・・・・」

「えっ?何を見せるって?」


 西条はフードを外して顔を見せた。そこには、髪の毛はセミロングで、大きな瞳、一般的に可愛い呼ばれる顔立ちだった。


「どう?」

「どうって言われても・・・」


 急にそんな事を聞かれても、慣れてないから困る。なんて返そうか悩んでいると


「よしっ!私の事知らないっ!はぁ〜あ安心した〜」

「知らないって当たり前だろ?!さっき会ったばっかなんだから」

「そうね、そうだったわね」


 急に意味のわからない事を言い出して、勝手に安心して、こっちが知らないと言うと、冷たい返事が返ってくる。


(なんなんだ、コイツは・・・・・・)



「安心したらお腹空いちゃった、何か食べるものない?朝から何もお昼から何も食べてないのよね」

「カップラーメンくらいしかない・・・・けど、良いか?」


 そう聞くと、呆れた表情でこちらを見てくる。やっぱりカップラーメンじゃ、文句を言われると思い覚悟していた。


「何言ってるのよ、こっちは家にあがらせてもらってる上に、ご飯までご馳走になる時に、文句なんて言うわけ無いじゃない、それとも何?私が文句を言う、礼儀知らずに見える??」


 自信満々に言っているが、実際の所礼儀知らずには見えてしまう。



 その後、カップラーメンにお湯を入れ、自分の分と西条の分を持っていく。


「一つ聞きたい事があるんだが、いいか?言いたくない時は、言わなくて構わない」


 西条はそれを聞いて、小さく頭を縦に振った。


「なんで、あんなところに1人で居たんだ?」

「・・・・・・言いたくない」

「じゃあ何してたんだ?」

「考え事」

「いつからあそこに居たんだ?」

「4時半くらいからずっと」


 それを聞いて驚いた、4時半から優のバイトが終わった、21時過ぎ、までずっと考え事をしていたとは思えないが、言いたくないことは言わなくて良いと言ったので、あまり聞かないでおく。


「じゃあ何歳なんだ?」

「16、誕生日が来ると17歳になる」

「まさか、同い年だとは」


 ある程度質問をして、西条は3分たった、ラーメンを口に運んでいた。


 女子高生と、テーブルの対角に座ってラーメンを食べている事に少し違和感を感じてしまう。


「アンタは、いつもあんなに遅くまでバイトしてるの?」


 と今度は西条から質問してきた。


「いや、この間は店長が仕事を押し付けてきて」

「それで、遅くなったって訳ね」

「ていうか、これからどうするんだ?」

「明日には帰るわ、バレたらまずいもの」

「それもそうだな」


 会話が終わるとなんとも、思い空気になってしまう。

 なんとか、会話を盛り上げようと、話題を考えてると


「考え事してる最中悪いんだけど、それ伸びるわよ?」


 と指を指したのは伸びたラーメンだった。



「どう?ラーメンって伸びても美味しい?」


 西条の、煽り混じりの質問に、少しイラつきながらも、「あぁっ」と言いながら、ラーメンを啜る

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