第21話 西条の看病

 西条から、家にあるものだったら使っていいとの許可を得たので、早速料理に入る。

 スマホで[お粥 簡単 美味しい 作り方]で検索し、自分でも作れそうで尚且つ美味しそうなレシピを探す。



 レシピをスマホで表示しながらまず米を水でジャカジャカと研いでいく。

 その次に鍋に入れ水を加えて火にかけますと書いてあったのでその通りにする。



「沸騰してきたな・・・なになに?沸騰したら弱火にして、軽くかき混ぜる」


 弱火にし、鍋に入っているお米を箸で軽く混ぜる。


 蓋をして、かき混ぜながら30分程煮込む。

 タイマーを30ぷんスマホでセットし、ジッと鍋を見つめる。


 30分経ったら用意しといた器によそい、お好みで塩をかける・・・か


 西条に塩をかけて貰えばいいか、と思い塩はお粥と一緒に持っていった。


「西条できたぞ」

「あ、ありがとう」

「熱いかもしれないから、冷まして食べろよ?」

「うん」

「あと、自分で塩はかけてくれ」


 西条は大きく頭を縦に振り、こちらを見てくる。


「・・・・・あーん」


 と言いながら西条が口を開けている。


「西条?何してるんだ?」

「食べさせて・・・」

「ったく、仕方ないな今回だけだぞ」

「うんっ!あーん」


 なぜかその時の西条を見ていると、妹を看病しているような感覚だった。


「ふふっ、美味しい」

「そっか・・・・・・よかった」


 西条の口から「美味しい」と聞けたので優はとても安堵した。


「まぁ、レシピ見たからな」

「レシピ見て作ったとしても、気持ちは伝わってくるよありがとうっ」


 俺は照れ隠しで「塩いるか?」と言い話題を逸らした。


 その後片付けも済んだので、自分の荷物をまとめて、帰る準備をしていた。


「じゃあ俺は帰るけど後は黙ってねろ」

「・・・・・・うん」

「じゃあ安静にしとけよー」


 そう言い、帰ろうと立ち上がると、服の裾をチョンチョンと掴んでくる。


「どうした?なにか足りなかったか?」

「・・・・・・いて」

「えっ?なんて?」

「寂しいから、私が寝るまで隣に居て」


 そんな事を急に言われてしまうと、言葉が出なくなってしまう。


「ねぇ、だめ?」


 と服の裾を掴まれながら上目遣いをしてくるのでこんなの世の中の男性でこれをされて断れる男性はほぼ居ないと思ったほどだった。


「まぁ、寝る時までな」

「やったー、えへへ、これで寂しくない」


 すると西条は、10分もしない内に眠りについた。その寝顔はとても綺麗で、なんというか傷つけては絶対にダメだと思った。


 赤ちゃんのような綺麗な肌が熱を帯びているせいで赤くなっている。


「じゃ、おやすみ西条」


 そう言って西条の家を後にした。


「あれ?桐島君じゃない〜どうしたの?」

「あ、西条のお母さん実は・・・」


 西条のお母さんに事情を話して後は全て任せることになった。


「ありがとねっ、桐島君」

「いえ、大丈夫ですよ」



⭐︎ ⭐︎ ⭐︎

 翌朝西条が俺の家に来た。


「どうした西条?」


 するといきなり胸ぐらを掴んできた。


「な、何すんだっ?!」

「・・・・・れなさい」

「やめろ、おい!」

「昨日あったことすべて忘れなさい!!」


 西条は、熱など風邪を引いてしまうと、熱でその時は本人には記憶がないらしい。しかし、治ったら思い出して、後から後悔するらしい。


「忘れるって言っても無理だろ!」

「じゃあ、こうなったらアレを使うしかないわね」

「アレってなんだよ・・・・・・」


 アレとか言ってなにか、持ってくるのかと思ったら、


「えっ?忘れるまで殴る」


 ただの拳で逆にびっくりした。


「忘れるまで殴ってたら多分俺死ぬぞ?」

「それも、仕方ないわね」

「仕方なくないだろ!だいたい、なんでそんなに忘れさせたいんだよ」

「恥ずかしいからに決まってるでしょ?!」

「可愛かったから別に良いだろ」


 そう言うと、白い肌が急激に赤みを帯びていく。


「なんか赤いぞ?まだ熱あるのか?」


 とおでこに触ると、普通だったが次の瞬間右頬にパチンッ!という音とともに痛みが走る。


「ば、ば、バカッ!なに触ってんのよ!」

「いって!熱あるかと思っただけだろ?!」

「うるさっい!セクハラよセクハラ!」


 セクハラなどと言われ、たしかにいきなり触ったのは悪かったが別にそんなに言う事でもないと思った。


「ふぅー、ありがとね昨日はそれだけ」


 と言い、帰っていった。


「いや、いきなりそんなこと言うなよ調子狂うな」


 優はその場に倒れ込み、自分の顔がじんじんと熱を帯びるのが分かった。



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