第22話 海+ナンパ

「お、きたきた、おせーぞ桐島」

「悪い悪い目覚ましが鳴らなかったんだ」


 朝10時にセットしていた筈の目覚ましが俺を深い眠りから起こしたのは10時30だった。


 集合時間が10時30分だったのもあり、絶対に間に合う筈がなかった。


「結局優のせいで、電車一本遅くする羽目になったんだからねー?」

「わ、悪い・・・」

「桐島なんか奢りな?」


 これは、自分が悪いので「うん」としかいえなかった。


 今日は涼の提案でクラスの男女数名で海に行く予定だ、最初は乗り気じゃなかったのだが、涼にどうしてもと、頼まれたのでついてきてしまった。



 夏休みということもあり、海には結構の人がいる。

 浜辺で背中を焼いている人や、砂を積んでお城を作ってる人、浮き輪で浮いてる人など、沢山の人だった。



「少し喉渇いたな」

「じゃあ、遅れた桐島がみんなの分買ってくるって事で」

「へいへい、それで何買ってくればいいの?」


 みんなが各々俺に注文を言ってくる。一斉に言われても、聖徳太子じゃないので、分からないがなんとなくで大丈夫だろうと思い、そのまま買いに行った。


「あっ、優私も行く」

「はっ?なんで」

「だって一人じゃ大変でしょ?」

「いや、何十人もいるわけじゃないんだから大丈夫だよ」

「そっか・・・話変わるけど、この水着どうかな?」

「えっと・・・・・いいんじゃないか?」


 そのあと真衣はクルッと周り、みんなのいる方へ戻って行く。


 やはり周りを見ると、家族連れも多い、しかし結構目立っていたのはナンパだ、腹筋の割れた男や金髪のチャラそうな男が、ちらほら、ナンパしてるのが見える。


 ここに西条が来ていたら、どれくらいナンパされるんだろうな、と勝手に考えてしまい、何故か腹が立ってきた。


「って!なんで俺がムカついてるんだよ!」


 早くジュース買わないと、そう思いあまり種類が多くない自販機に1000円を投入し、みんなの飲み物を買う。


「えっと・・・俺は・・・」


 ボタンをピッと押して、お釣りをとって帰ろうとしたところ、奥の方で一人の女性が、金髪の男性二人にナンパされていた。



 こういうのは、関わらないことが一番と思い、すぐさま立ち去ろうとしたら、その女性の水着な目に入った。



(あれっ?あの水着って・・・まさかな)


 その女性は上はラッシュガードを着ていたが、下は水着だった。


 見覚えのある水着だと思った。それもその筈だ、その水着は俺が西条に思わず可愛いと言った水着だったからだ。


 自販機の横からバレないように、その様子を見ていた。


「ごめんなさい用事があるので」

「えぇーいいじゃーん」

「お堅いなぁー」

「あははっ、しつこーだからナンパ失敗するんだよ?」

「はっ?なに、喧嘩売ってる?」


 いきなり西条は相手の男を煽りだした、その男も黙っているわけではなく、脅すように言ってきた。


 流石にヤバいと思い、飛び出した。


「ごめんごめん、遅くなって」

「えっ?桐島?」


 俺を見た途端「彼氏持ちかよ」「冷めたわー」などと言って、違う女性にちょっかいをかけていた。


「なにしてんだよ、相手のこと煽ったりして」

「あっ、聞いてたんだ、すぐに助けに来ないなんてさいてー」


 男としてどうなの?みたいな感じで、こちらを見てくる。


「でも、やっぱり優しいんだね、もしかして私だったから、助けてくれたのかな?」

「うるせぇ」

「あっ!そうなんだぁ〜」


 へーという感じで、にやにやしていたので、話題を逸らしたかった。


「何してんだよこんなところで」

「んー、仕事がこの近くであってその息抜き、他のみんなもいるんだけど、じゃんけんで負けてジュース買いに来たの」


 そのあと、俺が手に待っているジュースをびっくりした様子で見ている。


「桐島も大変なんだね・・・」

「言っとくけどお前が思っているような感じじゃないからな?」

「そっかそっかー」


 哀れんだ表情から、けたけたと笑い出し、「あー、笑ったー」などと言い、お茶を3、4本買って


「そろそろ、みんなのところ帰んないとー」

「おい、その・・・水着似合ってるぞ」


 俺がそう言うと、またこちらを向き、照れながらも、「えへへ、嬉しい」と言って西条とは別れた。


「へぇ、あの子も来てたんだー」


 その声を聞いて振り向くと、真衣が説明しろと言いたげな顔でこちらを見ていた。

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