第18話 買い物のあと
自分の名前を呼ばれた気がして、振り向くとそこには、幼馴染の真衣がいた、その後ろから息を切らせながら来たのは涼だった。
「なんで、ここにいるの?」
「いや、俺も水着欲しかったからさ」
長内は、俺のことを疑うかのようにじっと俺の方を見つめてきた。
そのあと、俺が持っている水着の方に目を落とし
「それ、買わないの?」
「あぁ、買うけど・・・」
「けど?」
西条には悪いが、先に手に持っている水着を会計した。
連れを待ってるなんて言ったら、絶対に疑われるよな、しかも涼と一緒となると、絶対に追求してくるに決まっている。
「あっ!そうだ、せっかくなんだし一緒に回ろうぜ?」
「そうね、優この後空いてる?」
「・・・えっ、えっと」
「いこーぜ!な?頼むよ〜」
涼が手のひらを合わせて、お願いというポーズを取ってきた。
しかし、先に誘われていた西条のことを放っておくわけには行かない。
「悪い、実は予定あるんだ」
「予定ってなに?」
「・・・・・・えっ?」
「だから、その予定によっては私達も付き合うわよ」
「いいよ、別にお前らは二人で楽しんで来いって」
「もー!いいから行くぞ!」
涼は俺と真衣の手を取り、強引に俺たちを店の外へ連れ出した。
「おい!涼!何すんだよ!」
「いいだろ?どうせ予定なんてないんだろ?」
「いや!本当にあるから!」
「じゃあそれ済ませにいこーぜ!」
コイツの空回りしているところはたまにめんどくさいと思う時がある。
結局フードコートのテーブルで雑談し始めた。
すると、エレベーターの方から西条が歩いてくる。
キョロキョロと誰かを探してるような感じだった。そして、俺と目が合った途端こちらに向かって歩いてきた。
「やっと見つけ・・・・・た」
西条は、俺に声をかけてから"やらかした"と気づいたのだろう。
「優、だれ?この人」
「えっと・・・その」
「俺どっかで・・・あっ!西条恵!今話題の高校生グループの!」
「えっ?有名人?」
バレてしまった。これは西条が悪いとかではなく、悪いとしたら涼達の誘いを断りきれなかった自分にある。
「あぁ、そうだよ」
「あんた達どういう関係?」
「付き合ってはない!友達だ」
「そうね・・・友達・・・・・ね!」
西条は優のその返事を聞いて、少し表情が曇っていた。
「ふーん、そうなんだー」
真衣が、西条のことを足の爪先から頭の先端まで睨みつけるようにジロジロ見ている。
「お、おいやめろよ」
「あれ?庇うんだ、やさしー」
「なんか、お前変だぞ?」
「有名人と来てる優に嫉妬ー」
何故か真衣は西条に敵対意識を持っていたりするのだろうかと思うほど睨んでいた。
「あっ・・・じゃあ私帰るね?」
「あっ、西条!」
「桐島は楽しんでいいよ」
「そうだよ、優せっかくなんだしさぁ、」
「いや、先に遊ぶ約束をしたのは西条だから、西条が帰るんだったら俺も帰る、西条を家に送り届けないと」
「は?なにそれ、あっそじゃあ行けば??」
さっきは西条に睨んだと思えば、今度は俺に睨みつけてくる。
(なんなんだ、真衣やつ、本当よく分からん奴だ)
「・・・・・・そういうことか」
「なんだ?西条?」
「・・・・・・なんでもない」
西条が、怒るのも無理はない。
二人で遊んでいたのに、いきなりいなくなって、他の友達と遊んでいるなんて、怒るに決まっている。
そのあと西条は、西条がよく行くというクレープ屋さんのクレープ二つをご馳走し機嫌を直してもらった。
西条曰く、「私と約束してたんだから、誘われても断るってことをしなかった訳?!」と怒られてしまった。
子供が親に怒られたかのように俺は、ただ反省しか出来なかった。
「まぁ、それとは別に不機嫌だったというか、少しがっかりというか」
「別に俺、なんかしたか?」
「んー?ライバル増えちゃったなぁーって」
「ライバルって?」
「アンタは知らなくてもいいの!!」
と持っていたバックでボフッと殴られる。
「でも、ちょっと嬉しかったよ?あの時クラスの子達じゃなくて、私を選んでくれたこと」
「それは、当然のことだろ」
「しかも、水着姿も可愛いって言ってもらえたし、えへへ、今日はもう満足かな!」
そう言って、少しはにかみ笑いのような西条を見た時、ドキッと心臓が鳴った。
その後の心臓の音はドクンドクンと、周囲に聞こえるんじゃないかと思うくらい大きかった。
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