第7話 知らない男

 西条の相談を受けてから、またいつも通りの日々を送っている。

 学校に行き、バイトをして、また寝るそんな毎日だ。


「すみません、少し遅れました」


 今日は少し学校が長引いて、バイトに遅れてしまった。

 店長に謝るが、全く気にしてない様子だったので、少し安心した。


 きっちり働いて、バイトが終わったので、別室で休憩して、スマホのニュースを見ると、西条のアイドル姿の写真が載っていた。



「俺はこのアイドルに看病されたんだよな?」


 自分でも未だに信じられない出来事だったので、少しおかしく感じでしまう。


「優、なんでにやにや、してるんだ?」

「へ?にやにやなんて、してました?」


 気持ち悪いと言った表情で、店長から見られていた。

 恥ずかしくなり、顔が赤くなるのがわかった。


「そんなことより、お前に用がある奴が店の外で待ってるぞ」

「僕にですか?」


 自分のバイト先を知っているのは、ごく僅かしか居ないため、友達が冷やかしに来たんだろうと思って、店の外に出たが、そこで待っていたのは、顔も知らない男の人だった。


「あ、あのぉ、すみません呼ばれて来たのですが・・・・・・」


 恐る恐る近づいて声をかけると、こちらに気づいた男は少し微笑んできた。


「あ、桐島優君だね?」

「はい・・・・・そうですけど、なんで僕の名前を?」

「店長から聞いたんだ〜」

「はぁ、それで僕になんか用ですか?」


 それを言うと少し、間が空いたが、うん、とはっきり聞こえた。



「一つ聞きたいんだけど、君は恵と仲良い様に見えるけど、どうなの?」

「はっ?恵って、えっ・・・?」

「とぼけないでよ〜君が恵と2人で会ってるの見たんだよね〜」

「その前に、一つ僕の質問に答えてください」

「ん?何?なんでも答えるよ〜」


 その男はニコニコしているが、心から笑ってないような感じがして、怖かった。



「あなたは、西条のなんですか?」

「俺?俺はねぇー恵の元カレ」


 それを聞いて言葉が出なかった。たしかにあまり触れてはいなかったが、顔はイケメンという部類に入るだろう。しかし、この男が元カレとはすぐには納得できなかった。


「俺は答えたよ、次は桐島君の番だね」

「俺は・・・ただの友達です」


 それを聞いた男は、きょとんとした表情を浮かべていた。


「なぁ〜んだ、つまんないの」

「なんですか、それ」

「ごめんごめん、あんなに泣きながら、別れるのが嫌だった恵が、もう男を作ったビッチだったのかと思ってたから、安心したんだよぉ〜?」

「あっ、そうですか、じゃ、僕はこれで」


 なぜ、僕がコイツが西条の元カレと言った時、すぐに納得できなかったが、今分かった、とてつもない、クズだからだ。


「僕の話を聞いてくれたお礼として、あと一つだけ質問に答えてあげるよ」

「じゃあ、なんで別れたんですか」

「俺はね、恵と、付き合ってる時、もう1人の女と付き合ってたの」

「浮気ですか・・・・・・」

「そうそう!それでね、なんか、恵は顔もスタイルもいいんだけど、ウザいし、ヤラセてもくれないから、別れた」



 冷静に話を聞こうと頑張っていたが、コイツの顔を見てると、怒りがさらに込み上げてくる。


「じゃあ、今はその浮気相手と交際を?」

「いや?その子とも、別れた今は違う子と付き合ってるよ、けど恵の方がスタイルよかったんだよねぇ、マジでヤればよかった」

「もういいです、帰ってください・・・」

「あれ?怒った?まぁ、君も狙ってるんでしょ?」

「さっさと帰ってください、あなたのこと見てると殴りそうなので」


 一瞬ニコニコしていた表情がこちらを睨むような目つきになったが、その男は、なにか納得したように帰っていった。













  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る