第15話 西条の家にお邪魔します

 西条と連絡先を交換して、3日が経った。しかし交換したはいいものの、『よろしく』と来たのでこちらも『よろしく』とだけ送り返して、その他は何も話していない。


「結局、西条の家にはお邪魔することにはならなそうだな」


 なぜか、少しホッとしてしまった。女子の家に行くというのは、誰だって緊張するものだろう。

 しかも、相手がアイドルとなれば尚更だ。


 と安心しきっていた時スマホが振動し、ピロンッと音が鳴る。


 まさかとは思い、画面を開くと西条からメールが来ていた。


『急だけど、明日だったら土曜日で私も仕事午前中で終わる予定だから、家に来てもいいわよ』


 メールの内容は、午後だったら家に来てもいいという、誘いだった。


『お母さんも、是非来て欲しいだって』

『分かった、午後お邪魔させてもらうよ』

『お母さんにも伝えとく』


 今日の会話はこれで終わった。しかし心臓の鼓動は早くなる。

 さっきまでとは、うらはらに、焦っている、明日何を着て行こう、何か持っていった方がいいのか、など考えてしまう。



「どうすればいいんだよ・・・・・」


 そう言って今日は眠りについた。


 気がつけば、時計は10時を過ぎ、もう少しで11時になるところだった。


「やばいやばい、寝過ぎた・・・・・」


 とりあえず、ベットから、体を起こし冷蔵庫から、牛乳を取り出しコップに注ぎ、ゴクゴクと飲んでいく。


 朝ごはんにはシリアルに牛乳を注いで、スマホでニュースを見ながら、ゆっくり食べた。


『今から家出る』


 西条にこのメールだけを送信して、家を出る。


 しばらく歩いて、以前ストーカーを西条のお母さんが背負い投げした場所に来た。


「もうすぐそこか・・・」


 西条の家に着いて、改めて緊張する。インターホンを鳴らし、「はーい、あっ、ちょっと待っててね」という西条のお母さんの声が聞こえた。


 その後にガチャッと玄関が開いて、リビングまで案内してもらった。


「ごめんなさい、恵はまだ帰って来てないの、もう少しで帰って来ると思うんだけど」

「あっ、そうなんですか」

「桐島君、何飲みたい?」

「いや!気にしないでください」

「ダメよ〜ちゃんとご馳走したいんだから、じゃあコーヒーでいいかしら?」

「はい、ありがとうございます」


 未だに緊張が取れず、気まずい雰囲気になっていたので、西条が来るのをずっと待っていた。


「はい、どうぞ」

「ありがとうございます、あれ?これどっかで見たことあるような」

「あっ、わかる?これすぐそこのケーキ屋さんで買って来たの」

「これも、頂いていいんですか?」

「ええっ、食べていいわよ」


 そう聞くと、微笑みながら返してくれて、とても優しいお母さんだと思いながらも、申し訳なさが強くなってきた。


「ただいまー!」

「おかえり恵、桐島君来てるわよ」

「お、お邪魔してます」

「あっ!ケーキ!私も食べたい」

「ちゃんとあるから、手洗って来なさい」



 西条は「はーい」と言って洗面所へ向かって行った。


 その後帰ってきて、なにやらケーキを眺めている。


「食べないのか?」

「い、いや、た、食べるけど・・・」

「恵は桐島君の方の味も食べたいのよ」

「そうなのか?」

「ち、ちがっ!くなぃ・・・・・・」


 西条は少し顔を赤らめていた。


「じゃあ半分食べるか?」

「えっ!いいの!?」

「そんなに食べたかったのか」

「うっ、うるさいわね・・・」


 俺はまだ口をつけてなかったケーキを半分切り西条の皿に置く。


「じゃあ私のも半分あげるわよ」

「えっ?いいのか?」

「当たり前でしょ?もらったんだから返さなきゃフェアじゃないわ」

「じゃ、じゃあ」


 そう言い、今度は西条の方のケーキを半分もらった。


「んん〜美味しい〜」

「確かに、すごく美味しい」


 ショートケーキもチョコレートケーキもどちらもとても美味しかった。


 大きく、口を開けて食べようとした時、パシャという音が隣から聞こえてきた。


「何してんだよ西条」

「ええっ〜?写真撮っただけだけど〜?」

「いや、写真撮るな、今すぐ消せ」

「どうしよっかなぁ〜」


 西条からスマホを取ろうとするが、上手くかわされてしまった。


「お、おい!逃げるなよ!」

「素直に効くわけないでしょ!バーカ」

「はあっ?!いいから早く消せ!」


 そう言って追いかけたら、何もないところで何故か転んでしまい、目の前にいた西条を押し倒す形になってしまった。



「いててて・・・大丈夫か?さいじょ・・・う?!」

「う、んん、・・・」


 転んだ拍子に俺は西条の右の山を手で触っていた。その感触はとても柔らかく弾力があった。正直ずっと触っていたかった。



「なっ、何してるのよ!?」

「こ、これはわざとじゃ・・・」

「言い訳するな!!ほんっと最低・・・」

「いや、これは本当に・・・」


 どうにかして、西条の誤解を解こうとしていたら、西条のお母さんが、「あらあら」と言いながら扉をそっと閉めたのがわかった。



「お母さん!?今見てましたよね?!誤解です!これには、ちゃんと訳が」

「ふーん、ちゃんと理由わけがあって、私の胸を触ることがあるんだ、聞かせてもらおうじゃない」

「えっと、その・・・・・」

「ほら!ただ触りたかっただけなんでしょ!この変態!」





⭐︎ ⭐︎ ⭐︎

 西条のお母さんには誤解されたままで、西条にはあの後口を聞いてもらえなくなり、そのまま西条家を後にした。


(でも、西条の胸大きかったなぁ)


 って!ダメだダメだ、こんな事考えちゃ、はぁ、確実に嫌われたかなぁ、どうやったら許してもらえるかを考えながら帰路につく。

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