最終話 東雲 美月へ

 強くなくてごめんなさい。自分の気持ちに正直になれなくてごめんなさい。


 手が届きそうなところに、いつもあなたは居てくれたのに、臆病な私でごめんなさい。


 私はあなたが好き。その一言が、いつまでも喉の奥から出てこない。


 あなたはきっと私を受け止めてくれるのに、心の奥を疑ってごめんなさい。


 人の醜い部分を知って、あなたの中にもそれがあるんじゃないかと怖くなってしまった。


 それでも、胸の中のこの想いだけは本当だって信じていたかった。


 それを偽ることに耐えられなかった。


 灰色の私の人生に、光り輝く彩をくれたあなたに、私は何も返すことができなかった。


 優しく頭を撫でてくれるあなたの手が好き。


 私を守ってくれる頼もしい背中が好き。


 私の名前を呼んでくれるその声が好き。


 吸い込まれるような、綺麗な瞳が好き。


 いつも自信に満ち溢れた、あなたのその強さが好き。


 もっと沢山、あなたにこの気持ちを伝えられたら良かった。


 あなたにとって特別な存在に、いつかなりたかった。


 それなのに、いつまでも私は弱いままだった。


 ごめんなさい。


 一緒に飛べなくてごめんなさい。


 私はいつまでも、あなたが好き。


 どうかこの想いだけは、あなたに届くことを願っています。


                                 南原 真友

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