第22話 メールの返事
「きたきたきたきたっ! メール! 返事来たっ! これすごいっ!」
ぴょんぴょんとはしゃぎながらシズが食堂に戻ってきたのは、それから五分もしないうち、である。
「……なんて送ったの?」
「えっと、とりあえず『元気?』って」
「返事は?」
「『連絡OSEEEEE』だって」
一応、元気はあるみたいだ。
島田が、
「状況と今いる場所を聞いてくれ」
というと、シズは食堂から出て行く。
数分すると、ぴろりろりん、と、音がする。
「また返事きたっ」
すぐに食堂を出て、今度は絶縁体でできた袋にしまうのもそこそこに、戻ってきた。キミタカを含めた、その場の人間全員を冷や冷やさせる。
「『ちょっと撃たれちゃったから、回復中。再生するのに、しばらく時間がかかる。今隠れてるとこ』、だって! えーっ、大丈夫なん! えーっ」
「シズちゃん。報告は簡潔に」
島田がやんわり注意する。
「ええと、……なんやこれ。『辞表を捨てたところの近くにいる』……辞表?」
「一種の暗号です」
キミタカは言い切る。内心、アカネへ恨み言を言いながら。
「新昭和湖のあたりですね。あの廃棄された基地の周辺です」
キミタカは地図を取り出し、だいたいの場所に丸をつけた。今、改めて地図を見ると、以前入った場所は、見事に『立ち入り禁止区域』の奥の方だった。そういった場所は人間には危険すぎて、麓のわんぱく小僧でも近づかない。今更ながら、背筋が凍る思いだ。
「ここか……」
島田は少し舌を打つ。他の先輩方も、同じ思いのようだった。
「急いでも一時間半はかかる。今は百鬼夜行の最中な上、視界も狭い。くそっ。もう少し近けりゃ援護も出来たんだが……手詰まりだな……」
「そんな!」
悲鳴を上げたのは、シズだ。
「まだ、わからん。とにかく打開策があるかも知れん。もう一度作戦を練る。シズちゃんは引き続き、詳しい状況を聞いてくれ……」
そこで、シズの袋から発信音が鳴った。さっきのと同じ音だ。
慌てて食堂から出るシズ。少しして、「アカ姉ぇのあほーっ」という声が聞こえた。
「どうした?」
「『暇。しりとりしよう。』だって!」
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