遥かな(2)【魔女は小さな隣人と共に】

 遥かな昔、妖精や精霊は人間にとって身近な存在でした。世界には魔法使いや魔女も多く、魔法を使う時には妖精や精霊に力を借りていました。

 さて、魔法使いや魔女がおとぎ話の中の存在となった現代。妖精も精霊も魔法使いも魔女も、もう実在しないのでしょうか。

 ──いいえ。彼らは数は減ったものの、普通の人間に混ざって生活しています。

「あれ?今日もパーカーなの?」

「あぁ、うん。なんか落ち着くんだよねぇ」

 友達とそんな会話を交わす少女は、灰色のパーカーを着ていました。パーカーのフードの中には、実は小さな風の妖精が隠れています。風の妖精は少女だけに聞こえるように、小声で話しかけます。

「ふふ。私たちが魔法使いや魔女と一緒にいるのに、この服は便利なのよね」

 数が減った魔法使いや魔女は、同じく数少ない妖精や精霊と、お互いに支えあいながら生きのびる道を選びました。

 そんな現代で、もしもすれ違った人がパーカーを着ていたら。そのフードの中には妖精や精霊がこっそりと隠れているかもしれませんね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る