Day.16 無月
無月【太陽の魔女と月の魔女】
これは、まだ多くの魔女たちが存在していて、いたるところで生活をしていた時代のお話。
この世界には、太陽の魔女と月の魔女がいました。
太陽の魔女は、太陽の魔力を借りて昼間の世界を守り、月の魔女は、月の魔力を借りて夜の世界を守る。それが各々の役目でした。
太陽の魔女も月の魔女も、世界に一人ずつしかいません。魔女は長寿ではありますが不死者ではないので、それぞれが時々代替わりしています。百年に一度だったり、三百年に一度だったり。間隔はまちまちですが太陽の魔女も月の魔女も代替わりをしながら、光が闇を侵さぬよう、闇が光を侵さぬよう、世界を守り続けてきました。
ある時、双方が同時に代替わりをしました。新しく役目についた魔女は、魔法学校の元同級生同士で、とても仲の良い二人でした。
二人の魔女は、役目を一生懸命に務めました。太陽の魔女と月の魔女は活動する時間帯が違うので、二人は夢の中でたまに会うことにしていました。
ある夜のこと。眠っている太陽の魔女の夢に、月の魔女が会いに来ました。太陽の魔女は久しぶりの再会に喜びました。
「貴女の方から会いに来てくれるなんて珍しいわね。とても嬉しいわ」
太陽の魔女は言いました。月の魔女は、陰のある微笑で言葉を紡ぎます。
「今日は、お別れを言いに来たの。
「えっ……」
「次の月の魔女はもう決まっているから、これからは、どうかあの子のことを支えてあげて」
月の魔女の瞳から、ぽろりぽろりと涙が零れていきます。
「親友の貴女と一緒に世界の役目を務められたこと……、私の誇りよ。ありがとう。──さようなら」
月の魔女の姿は徐々に薄れていき、やがて消えてしまいました。
太陽の魔女は大層悲しみました。
次の夜。太陽の魔女は重い気持ちのままベッドに入り、深い悲しみの中で眠りにつきました。
そして。夢の中で、新しい月の魔女が会いに来ました。まだ幼さが残る顔つきの少女でした。太陽の魔女は少女に既視感を覚え、不思議な気持ちでした。新しい月の魔女は、どこか懐かしい雰囲気があるのです。
「太陽の魔女さん、初めまして。新しい月の魔女です」
月の魔女は深々と頭を下げて挨拶しました。
「先代がいなくなってしまったのは、とても悲しいし、寂しいけれど……。お母さんのお友達に会えるのを、楽しみにしていました」
そう話す月の魔女の目は、よく見ると泣き腫らした跡がありました。けれど、強い意志のこもった、
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