Day.28 霜降り

霜降り(1)【年に一度の幸せを】

 友人と、高級な霜降り牛肉を使ったすき焼きを食べに行った。その帰り道のこと。

「美味しかったねー。年内にまた食べに行こうよ」

 満足気に話す友人に、私は肯定の返事はしなかった。

「んー……。年内、はいいかな。また来年の十一月でいいよ。一年後に食べに行こう」

「えー、なんで?あんなに美味しかったのに」

「美味しかったから、かな」

「え?」

 首を傾げている友人に、私の信条は伝わるだろうか。

「幸せを幸せだと感じることに、鈍くなりたくないの」

 舌も、心も、良いものに慣れると、鈍感になってしまうから。

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