　十一月に入り、来年用の手帳を探している時のこと。

　書店の特設コーナーにずらりと並べられた手帳の中で【来年の手帳選びに迷っているあなたへ！幸運を呼ぶ手帳です！！】こんなポップを見つけた。

　いやいや、幸運を呼ぶとか、そんな手帳あるわけないでしょ。内心では冷めた感想を持ちつつも、手帳カバーが好みのデザインだったので手に取ってみた。パラパラとページを流し見ていくと、なかなか凝った内容で。スケジュール管理のページはたっぷり書き込みできるようになっていた。それだけでなく、ちょっとしたマナーや雑学のページ、主要都市の路線図、切り取り線の入っている(小洒落たデザインの)メモのページまであった。

　スマホでのスケジュール管理が性に合わない、なにかと書き込むのが好きなアナログ派の私にはピッタリかも。最初に抱いた失礼な感想を都合よく忘れて、その手帳を持って会計レジの列へ並んだ。

　あれから五年が経った。今年も十一月に入り、手帳を買うために書店の特設コーナーを訪れる。迷うことなく、一冊の手帳を選んだ。

　同じメーカーの手帳をこんなに長く使うことになるとは……。そんなことを思いながらレジへ向かった。

　五年前よりも、日々の生活で小さな幸せに気がつけるようになった。あの時のポップは、あながち大げさではなかったかもしれない。