窓から見える光景
揺れている 揺れている
揺れているのは心地よい
心地良さを求めて
電車に乗ったのかもしれない
電光掲示板の
流れていく文字を
必死になって追いかけて
降りる駅を探してみた
左を見ても
右を見ても
ひとびとは光る画面に
魅せられていて
ぼうっとしている
不安になって
ぼくも光る画面に
目をやるけれども
焦る気持ちばかり
浮き出してしまう
窓の外は
乱立するビルの群れ
息が詰まりそうだ
次第に建物の背が小さくなった
柔らかい形をしている
敷き詰められた人工物が
少しずつ間隔を空けていった
切り取られた窓の光景は
懐かしさを帯びてくる
でも こんな光景を
記憶のなかに
持ち合わせてはいない
森が姿を現し
山に囲まれ
海が顔を覗かせ
空が近くなった
ぼくはいつしか
眠っていた
それでもまだ
降りる駅を探している
揺られている 揺られている
揺られていないと
不安になってしまう
ほんとうは
降りる駅など
ありはしないのかもしれない
ほんとうは
電車に乗ったまま
揺られて 揺られて
そのまま
朽ち果ててしまいたいのかもしれない
きょうもまた
ぼくは電車に乗って
彷徨いつづける
くらげ Lugh @Lughtio
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