寒さ

触れたものが冷たいと感じるのは

ぼくの手の先が温かいからだろうか?


ぼくの手でなにを温めることが

できるというのか

触れたことのないものばかり

力加減も知らない



身体が冷たさを感じるのは

身ぐるみを剥がされでも

したからだろうか?


ぼくはそもそもどんなものを

羽織っていたというのか

わからないことばかり

だれがつくったのかも知らない



震える唇が勝手に歌を口ずさむのは

楽しい気分に浸りたいからだろうか?


ぼくの耳に届かない歌を

だれが聴いてくれるというのか

形にならない言葉たち

だれの歌なのかも知らない



心が冷たさを感じるのは

ぽっかりと穴でも空いて

しまったからだろうか?


ぼくの心に空いた穴の部分は

いったいどこにあるというのか

目に見えないものたち

ほんとにあるのかも知らない



言葉を綴るのは寒さを

紛らわしたいからだろうか?

つづければつづけるほど

冷たくなっていく

寒さにすべてを晒しても

思考は働きつづける

ぼくは言葉を綴る

言葉を綴ることしか知らないのだから

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