あした

ぼくは獣 一匹の獣

ヒトには馴染めなかった

単純で 暴力的な はぐれもの

目の前に溢れる光景を

片っ端から殴りつけたいけど

図体ばかりデカい小心者で

心臓がバクバク鳴っているから

口を固く結んで じっと地面を見つめている

ヒトの皮をかぶって揺れている


はみ出したのか 押し出されたのか

気がついたら一匹だった


知らなくていいことを知ってしまったのだ

太陽の冷たさを そよ風の息苦しさを

どんなに望んだことだろう

太陽の温かさを そよ風の爽やかさを


見なくてもいいことを見てしまったのだ

黒い雨が降る瞬間を 雪原に咲く赤い華を

どんなに願ったことだろう

雨が透明であることを

雪原に咲くのは雪の結晶だけでいいことを


ぼくに世界が入り込んでくる

鼻をつまむ酸味と 胃もたれする甘味が

ぼくのなかに溶け込む

逃げ出したくなるけど 受け容れる

しかたないって言葉は嫌い

でも ほかに言いようがなくて

しかたないと口にする

受け容れたとき 覚悟はできた

ふるえる手を弱々しく握りしめて


無関心でいられたら

ヒトのままでいられただろうか?


見て見ぬふりができたなら

もう少し幸せを噛みしめられていただろうか?


ヒトのように器用ではなかった

ヒトの真似をするのが苦手だった

ヒトと群れることは窮屈だった

ヒトと違うことをわかってしまった


ぼくは獣 一匹の獣

でも 本当は

ヒーローになりたかったのかもしれない

変えられないものを

変えられると思ってしまったのかもしれない


野心が叫んでいる


頑固で 直接的な おろかもの

ヒトの皮をかぶって くすぶっている

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