第六章 ラブインバース

 それから一晩、僕は女神エリスを可愛がった。


 僕の楽しみごとの最中、エリスは何回もイった。僕が1回出す間に、彼女は5回もイッたんだ。死にかけのカエルみたいに足をピクピクさせて。


 生涯童貞を貫く定めだった僕にとって、これは驚きだった。なぜなら僕如きは、例え女と寝たとしても一瞬でイカされて、無様な醜態を晒してしまうとばかり思っていたから。


 そのうちになんだか彼女にマッサージでもしてやってるような気持ちになってきて、僕は腹が立ってきた。それで1人だけ楽しんでるんじゃないと罵ると、エリスはもっと罵って下さいと言わんばかりの甘えた声で僕に『おねだり』をしてきた。


 まったくバカバカしい時間だった。

 これが自分の脱童貞だと思うと余計にバカバカしくなる。どうして以前の僕はさっさと女を犯さなかったんだろう。叩いたって犯したって、こいつら大喜びするのに。


 そんな大自然の摂理はともかく、僕は女神の体を蹂躙しながら、ラブインバースを含む様々な事をレクチャーしてもらった。


 以下、僕なりにラブインバースの能力をまとめてみる。


 まずラブインバースは条件発動型の常時発動系スキルだ。

 ようは『条件さえ整えばいつでも発動できる』って事。これは非常にうれしい。

 ただしその条件というのが少し面倒だった。その内容は、


 1、発動時に『ラブインバース』と念じる必要がある(声に出さずともよい)。

 2、対象が必ず女である(男には効かない)。

 3、対象に触れることで発動する(服の上からでも可)。

 4、女に対する怒りが恐怖心に勝る必要がある。

 5、対象の魔力に応じて効果の遅延が発生する。


 という事だった。ややこしいので順番に考えていこう。


 1や2は問題ない。

 気になるのは、まず3だ。『対象に触れる事で発動する』こと。

 ラブインバースを使うには女に接近しなきゃならない。油断させるにしろ強引に近づくにしろ、何らかの手立てを打つ必要がある。相手が強力なら近づくだけでも一苦労だ。


 続いての問題は、4の『女に対する怒りが、恐怖心に勝る必要がある』こと。

 これは僕にとってはかなりの難題だった。何しろ僕は女が怖い。母親や義妹のエルザ、それにプリムといった最低のクズ女たちによって恐怖心を植え付けられている。

 だから僕がラブインバースを放つには、相応の怒りを貯めなければならないだろう。そのために一番よいのは、僕自身が酷い目に遭うことだ。プリムにやられた時のように、女から酷い事をされれば怒りが溜まる。その間は非常に苦痛だが、怒りさえ溜まれば後は好き放題できる。或いは誰かが酷い目に遭わされている所を目撃してもいい。とにかく僕がブチギレる必要がある。


 そして最大の懸念事項は最後の5番。

『ラブインバースは対象の魔力に応じて効果の遅延が発生する』

 これは致命的だった。

 僕が復讐を誓っているのはよりにもよってあの【賢者】プリム。

 あいつは人類最高峰を更に超える『S++』の魔力を誇る化け物。純粋な魔力量だけなら魔王にも匹敵する。正直言って、発動までにどれだけの時間がかかるか解らない。


 恐らく1日や2日じゃ効かないだろう。1か月くらいはかかるんじゃないか。

 その間プリムが自分の体の変調に気付かないわけがない。あの女のことだから、すぐにラブインバースの存在に気付いて対抗してくるだろう。ならばこちらも何らかの手を打たなければならない。


 ただ有難いのは、ラブインバースにはあらゆる魔法的、物理的な対策が効かないことだ。通常の魔法やスキルとは異なる発動系を成しているので、どんな障壁をも貫通する力を持っている(これが理由で服の上からでも効果がある)。なおかつ魅了や催眠とも違うから、状態異常無効化も意味がない。


 だから女神エリスいわく、一度食らったら使用者の精液を使った『魂洗浄』と呼ばれる特殊な儀式を行って、体内に流入した魔力の素となる物質を完全に排除するしか方法がないそうだ。

 だから僕としてはなんとかしてプリムに接近し、ラブインバースをぶち込んだ上で効果の発動まで逃げ切る。それさえできれば僕の勝ちだ。


 次は肝心の能力について。ラブインバースの能力には4つの特徴がある。


 1、使用時から発動時までに行った全ての行為が蓄積されて結果となる。

 2、精神と肉体、別々にラブインバースできる。

 3、ラブインバースの支配下にある女を受精させた場合、その受精卵を相当数消費することにより相手のスキルをコピーできる。

 4、怒りが最大限に高まったとき、真の力が解放される。


 フフフ。

 もうこれだけで僕は笑いが止まらなくなるんだけど、ちゃんと説明しよう。


 1は、つまりラブインバース使ってる最中にした嫌な行為は全部積み重なっちゃいますよ、って事だ。

 もし相手が魔力の低いクソザコメス奴隷候補だったら、こっちも脳みそ空にして接近していい。速攻でラブインバース発動して体触りながらキスでもしてやれば、どんどん僕の事が大好きになる。


 僕は。しかも、最底辺のドクズだ。

 僕を好きになる女なんてこの世にいないだろう。同じクズでもレオンみたいなイケメンなら内心喜ぶ女もいるが、僕だけは絶対にない。これだけは自信を持って言える。だからこそ僕はラブインバースに選ばれたのだ。僕はこの世界で最も女の愛から遠い存在。誰からも嫌悪されるがゆえにその効果は絶大なものとなる。


 次に2だ。

 精神と肉体、別々にラブインバースすることができる。

 これがどういう事かというと、まず精神にラブインバースした場合、対称の感情や意思に好意的な変化が現れる。ようは僕にゾッコンで恋してくれる。


 その一方、体にラブインバースを放つと、その女の体だけが僕の言葉に好意的に反応するようになる。つまり体のみを操れるという事だ。

 この場合相手の意思はそのままだから、非常に非情な悪だくみに使える。そいつが見下してた連中の前で恥を掻かせてやってもいいし、ほんのちょっと細工をして、戦闘中にミスを連発させたりとかもできる。どちらにしても本人の意識があるというのが素晴らしい。僕が受けたのと同じ絶望を女に味わわせてやれる。


 そしてお待ちかねの3。

 これがクソ素晴らしい。詳しい理屈も聞いてるけれど、さしあたり要点だけでいいだろう。

 僕がラブインバースで堕とした相手を妊娠させまくれば、僕はそいつのスキルを使える。つまりプリムとセックスしまくれば、僕は賢者になれるというわけだ。しかも女神エリスの話によれば当代の継承者は【勇者】以外全員女と聞くから、もしそいつらもクソ女だったなら徹底的に搾取してやることができる。


 最後に4については、怒りが頂点に達した時、僕の魔力が爆発的に増大して神聖液スペルマとして噴出すそうだ。更にその神聖液から溢れる光を浴びれば、どのような手段で対抗しても必ず僕の絶対服従メス奴隷と化してしまうらしい。

 つまりここぞという時の必殺技。いずれ使う時が来るだろう。


「アルス様……?」


 なんて事を考えていると、エリスがあの腹黒そうな糸目をトロトロに開いて僕に話しかけてきた。野外だけど服は着てない。一通りの行為の後、恥ずかしがる彼女に僕が着るなと命令したからだ。世界を統べる女神といえども、僕には逆らえない。


 エリスはそそり立つ僕の一物を顔の間近に見ると、処女みたいな目で優しくキスをした。服従の証としての土下座も欠かさない。女神が一物を礼拝している。


 これはそういう風に僕が躾けたのではなく、メスとしての本能。

 僕はそれを理解してるから、片足でエリスの頭を踏みしめてやる。


「は……あ……ぁッ!」


 きっと僕に足蹴にされたのが気持ちよかったんだろう。エリスが体を震わせた。

 どうやら軽くイッたらしい。股の間から体液がこぼれ出している。まったく醜い豚だ。


「エリス。僕は復讐しにいくけど、お前はこれからどうする?」


 僕はあくまで紳士らしく微笑みかけて言った。


「……はぃ。ご主人様の従者兼メス奴隷としてお傍に……と言いたい所なのですが……」

「言いたいところ、だって?」


 僕が少し声を荒げて再びエリスの頭を足蹴にすると、エリスは「はァあん……ッ!!」また内股をこすり合わせて白いケツを振った。


「ただの村人に何一つ抵抗できず屈服したバカメスクソザコ神の分際で生意気言うなよ。このまま頭を踏み潰すぞ?」

「は……はいぃ……バカメスクソザコ神で申し訳ございませんんぅ……でっ、でも私たち女神には、天上世界のルールというものがございまして……地上の人間に『必要最小限』以上の援助を行うことを禁止されているのです。ですから私は一旦天界に戻る必要があります……!」


 だ、そうだ。


「ふうん。奴隷の君が言うからには、その秩序覆すわけにはいかないんだろうね?」

「はい……もし覆せば、私は地上に降りられなくなってしまうでしょう。ご主人様のお役に立つには、これが一番かと……!」

「それってつまり、君を縛ってる上司がいるってことかな?」

「はい。私の上位存在としての女神がおります。破壊の女神と混沌の女神、それに創世の女神」


 なるほど。

 エリスの話を聞いた時、僕の頭にピンと浮かぶものがあった。それは彼女が『女嫌いの女神』だと名乗った事だ。


「ひょっとして、そいつらが君に何かしたの?」

「……私の復讐相手です。ご主人様にはあいつらを倒してもらおうと思っておりました」


 女神が気まずそうに言った。


 やっぱり。

 そもそもこのラブインバース。僕みたいなドクズに与えた時点で、自分が負けて奴隷に堕とされる可能性だって予測できたはずだ。

 それでもエリスは僕にこのスキルを与えた。

 だから何らかの理由があるとは思っていたけど、まさか復讐とはね。


 ふむ。

 女といえど、相手は神。それに比べて自分はただの被造物。勇者ですらない凡人だ。

 そんな僕が、果たして敵う相手だろうか?

 スキルは貰ったし、エリスも既に僕の言いなりだ。別に他人の復讐なんてわざわざしてやる必要はないだろう。正直そう思う。


 だけど僕の一物はそれで納得してくれなかった。

 こいつは僕にこう言ってる。


『難しい事は考えなくていい。エリスは気持ちよかった。だからきっとその連中も気持ちいいだろう。それなら犯す価値がある』


 あはは。

 一物にとって、相手が神だとかなんとかは一切関係ないみたい。

 さすがは僕が信頼できる唯一の友達。

 頼りになるなあ。


「ねえエリス。そいつらって可愛い?」

「私よりはキレイですね。もっとも中身はとんでもない化け物ぞろいですが」


 僕が尋ねると、エリスが嫌そうに顔を背けて答えた。

 どうやら嫉妬してるらしい。奴隷のくせに嫉妬とは生意気だけど今は捨て置く。

 それよりも女だ。エリスは僕が今まで見てきた中で3番目に好きな女だった(1番はプリムで2番はエルザ)。そのエリスが自分以上だというのだから、これは期待できる。


「なるほど。だったらそいつらもエリス同然のバカメスにしてあげる。それでいいでしょ?」


 僕がそう言ってあげると、


「ほ、本当ですかぁ!?」


 エリスが珍しく大声出して言った。

 よっぽど嬉しいらしい。

 そっか、エリスの復讐にもなるんだもんなあ。


『自分の快楽のために為す悪事が、他人のための善行になる』。


 なんて素晴らしいんだろう。世の中が全部これで回ればいいのに。


「まずは僕の復讐を果たしてからだけどね。うん、そしたらエリスの前でその女神ども並べてレズセックスさせよう。それから全員土下座させて、1人ずつエリスにした事を謝らせてあげる。そしたらエリスにレイプさせてあげてもいい」


 奴隷に対してこの配慮。

 ああ、僕ってなんて優しいご主人様なんだろう。

 全世界のバカメスどもが感涙にむせび泣くこと間違いなし。


「はいぃ……自慰がはかどりますぅ……!!」


 答えながら、エリスが自分の秘所を指で擦り始めた。さっそく連中とレズってる所を妄想したんだろう。自分の仲間のエロい姿で妄想して抜くなんて、ホントしょうがない奴だな。


 まあいい。

 エリスはラブインバースの使い方や効果だけじゃなく、女の口説き方から体の弱点部位まで何でも教えてくれた。それだけじゃなく、一連の実技の後には魔法で川の魚を獲ってくれ、平べったい草の葉で包み焼きにして振舞ってくれたりもしたんだ。


 だから僕はエリスにとっても『満足』してる。

 ちなみにだけど、『感謝』するべきじゃないこともエリスを見て学んだ。感謝されると女は図に乗る。だから徹底的に躾けなければならない。でないと逆転される。


『女は総じてクソだ。男から搾取する事しか考えてない』。


「エリス。今日から僕は知者アルスを止めるよ」


 僕は夜のうちに洗濯して乾かしておいた上着を羽織りながら言った。


「アルスを……? どういうことでございますか」

「うん。昨日までのひ弱でみじめったらしい僕はもう死んだ。今日からは一物ファルスと名乗ることにする。女に復讐するにはふさわしい名前だ」


 言いながら自分のアゴを撫で擦った。


 今はこの顔が誇らしい。

 プリムにボッコボコにぶちのめされた事で、僕の顔はゴブリン以下の腐れ顔と成り果てていた。

 まさに復讐者にふさわしい面構えだ。

 少なくともあの悪魔プリムはこの顔で犯そう。

 天使のような僕の顔に戻すのはその後だ。


「素晴らしいお名前ですね……! 私、思わずうっとりしてしまいました……! ファルス様、それでは旅立ちの前にこちらを」


 言いながら、エリスが僕に1000ゴールドの大金と黒い革手袋を手渡してきた。

 手袋は魔獣か何かの皮を使ったものに見える。


「これは?」

「私が集めたお金です。どうぞお使いください。こちらの手袋にはステータス秘匿の魔法が掛かっております。これをつけている限り、ご主人様がラブインバースを持っている事はバレません。仮に誰かから【解析】スキルを使われたとしても、スキル無しの凡人に見えるでしょう」


 なるほど。それはいい手袋だ。スキルがバレて警戒されれば女に接近するのが難しくなる。女を堕とす事に関しては、僕は暗殺者のように慎重でなければならない。


「ラブインバースに弱点はあるの?」


 念には念を入れて聞いておこう。


「『魂洗浄』以外に解除法はありませんが……可能性があるとすれば、ファルス様ご自身の精液を使われた場合ですね。液を媒介にして紋章の魔術回路を直接破壊された場合には、一切の効力を失ってしまいますので」


 なるほど。よく覚えておこう。


「エリスはいつもここにいるの?」

「はい。私はこの大陸の各地にある自分の神殿内ならどこにでも姿を現せます。やはり女神のルールで神殿の外に出る事は許されませんが……」

「そう。じゃ、使いたくなったら寄ってあげる」

「つ、使うだなんてそんな言葉、うれしい……! はい、ファルス様。エリスの全てはファルス様のためにのみ存在しております! いつでも気軽にご利用くださいませ!」


 そう言い残すと、エリスの体が朝焼け色の光に包まれた。

 次の瞬間には、もう彼女の姿はどこにもない。


 ……。

 一つだけ、気になっている事がある。それはラブインバースの発動効果の話だ。あれは魔力が高ければ高いほど効果が遅延する。


 エリスは女神だ。僕には【解析】のスキルがないから、彼女がどれだけの魔力を持っているのか解らないけど、素人ながらにその膨大な魔力量は肌で感じた。


 はっきり言おう。

 エリスにラブインバースの効果は発動してない。


 それにも関わらず、エリスはまるで僕の奴隷みたいな態度を取ってきた。あまつさえ僕に体を許し、その精を何度も腹の奥で受け止めたのだ。

 このゴブリン以下の容姿とドクズな性格の持ち主である僕の精液をだ。

 そんな女がいるだろうか?

 いる訳がない。

 だから非常に気にかかっている。

 何か理由があったんじゃないか。僕に中出しさせた理由が、何か。


『女は総じてクソだ。男を利用し搾取することしか考えていない』。


 何度もエリスをぶっ刺した僕の一物が、そう警告している。


 まあいい。

 なんにせよ、今はエリスの手のひらで踊ってやろう。

 あいつが怪しいって事だけ解っていればいい。復讐を果たした暁にはエリスを出し抜こう。そして他の女神たちをも従えてこの世界の覇者となるのだ。そんな未来もいい。


 僕は心にそう決めながら、朝もやのうっすら掛かった森を歩いて行った。


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