第五章 復讐開始~女神隷従~
「待って!? 動かないで!!」
この緊急事態に僕は慌てて叫んだ。美女が立ち止まる。
一目見て、僕は彼女を怪しんでいた。だって、こんなところに人がいることも謎だったし、彼女は僕の名前を知っている。何者かは知らないが、また詐欺かもしれない。
そうだ、彼女は『女』なんだ。
『女』はすべからく僕の敵だ。
「申し遅れました。私は『女嫌いの女神』エリス」
僕がそう決め込んでいるうち、女が名乗った。
女嫌いの……女神……?
いや、女神のくせに女が嫌いとか意味不明過ぎるだろう。
やっぱり怪しい。
「ウフフ。どうして私が女嫌いになったかって、興味あります?」
なんて僕が考えていると、自称女神がそう言った。
しまった顔に出てたか。
なんだろう。
知りたいような知りたくないような。
「まあ細かい話はよしにしましょう。それよりも、貴方にあるスキルを授けたいんです」
「……スキル?」
「はい。私は女に欺かれた男のために存在する女神。アルス、貴方は今とても悔しい気持ちを抱えておりますね? ですから私が助けて差し上げます」
欺かれた男のために存在しているだって?
何を言ってるんだ、こいつは。
そんな都合のいい女神がいるわけないだろ。女は全て敵なんだ。
僕は絶対騙されないぞ。
「わ、悪いけど興味ないから!」
僕はきっぱりそう言うと、この場から逃げ出そうとした。
「わっ!?」
だけど僕は逃げられなかった。
突然女の体が赤い光に包まれたかと思うと、僕の真ん前へ移動してきたからだ。慌てて退こうとして、硬い石畳の上に尻もちをついてしまう。
「女は信用できませんか?」
慌てた僕を落ち着かせようとしているのか、自称女神は中腰になってニッコリ微笑んできた。何か裏がありそう。
「そうでしょうね。貴方はそれだけ辛い思いをしてきましたから。では、これならいかがでしょう」
そしてそう言ったかと思うと、突然ローブの前部分を思いっきりたくし上げ、その中身を僕に内部を見せつけてきた。
「!?!?!??!?!」
もう、眼球ごと目を焼き尽くされるかと思った。
だって彼女は下着を穿いてない。
神殿の柱みたいに純白な女の生足の間に、まぎれもない茂み、赤毛に包まれた秘所があるのだ。
だけどちょっと不思議なのは、その少し上部分、へそと赤色の叢の間にハートの形の紋章が刻まれている事。
あれは……一体なんだ?
明らかに魔術的なものに見えるけれど……!
「あ、あああっ……あんたなにやってるんですかあああ!!??」
「何って、まずは信用して頂かなければなりませんし」
「ししし、信用って!? いきなり股間見せてくる女なんか信用できるかよ! ばっ……バカなんじゃないの!?」
「バカですよ? だって私、バカにされてしまったんですもの」
恐ろしさの余り僕が甲高い声で叫ぶと、女神はそう言って少し儚げに笑った。
相変わらず目鼻立ちから何から整った完璧な微笑だったけれど、やってる事のせいで狂気じみて見える。
「フフッ……どうぞ、お早くお受け取りくださいな」
余りの恐怖に僕が歯をガタガタ言わせていると、女神はその場に膝を突いて僕の手首を掴んだ。そして折り曲がったまま硬直している僕の指先を、赤毛の門へと導く。
「ッ!!??」
あまりにも突然のことで、僕は抗えなかった。
女神はまるで孫の手でもつかうように僕の手首を前後させ、自分の快感部分を刺激させている。
指先の感覚は殆どない。極度の緊張と恐怖で五感の殆どがしびれている。それでも何かじんわりとした温かいものが、氷漬けになった僕の指先を溶かそうとしているのが解った。これは女の体温。女の温かみだ。
「ん……ぁっ……ひああぁ……っ!?」
やがて僕の指が内側に引っかかると、女神が腰を前後に細かく震わせながら、その白くて細い首を鶴のように空に向けて喘ぎ震わせた。蕩けた目で中空に掛かる月を見上げている。
――ああ、綺麗な人だな。
なんて思った矢先、僕の指先にピシャピシャと女神の液体が降りかかってきた。
どうやら達してしまったらしい。達したのは彼女なのに、なんだか僕の方がイかされたみたいにボーっとしてしまっている。
訳がわからない。
ついさっきまで森をさ迷っていたのに、一体何がどうなってるんだ、これは。
「あっ……はぁっ……あんん……ッ……さすがは私が見込んだ人間です……! これほどまでの適性がおありとは……! アッ……ひっ、一掻きで、私が気をやられてしまうだなんて……ッ! 貴方の怒りと憎しみで、体がドロドロに溶かされてしまっています……ッ! この欲情……とっても気持ちいい……ッ!!!」
荒い息遣いでやっとそう言うと、女神はその場にへたりこんだ。
そして黙ったまま、彼女の液体で濡れた僕の指先に口を近づける。そしてバクリと口を開けると、蛇を思わせる動きでチロチロと僕の指先を舌先で舐め、それから一気に咥えてきた。指の腹や指の合間を彼女の舌が這い回っている。
その得も言われぬ快感に加え、仮にも女神を名乗る美女が目の前に跪いてこんな事をしているというので、僕の股間は一気に怒張してしまった。
「…………どっ……どうして急にこんなことを……っ!?」
「……手の甲を、見て頂けます?」
僕がやっと尋ねると、女神が口に糸を引きながら言った。
言われて視線を降ろしてゆくと、右手の甲にハート型の紋章が輝いている。
それはさっきまで女神のお腹にあった紋章だった。ただし本来の向きとは逆についている。ちょうどスペードから取っ手の部分を外したような感じだ。
「なに……これ……?」
「これは【ラブインバース】を持つ者のしるしです」
「ラブ、インバース?」
「はい。これは世界にただ一つしか存在しないスキル。それを今私の魔力を帯びた体液によって貴方に移植しました。その効果は『嫌悪感を好意に変換する』というもの。つまり『相手が自分を嫌えば嫌うほど、逆に好きになってしまう』好感度反転の能力なのです。これさえあればどんな女もイチコロ。適当に体をまさぐって罵倒してやるだけで、みんな貴方を大好きになってくれますよ」
そう言うと女神は糸のように細いまなじりを大きく下げ、淫靡な笑みを零した。いかにも詐欺師らしい笑みだ。
「素晴らしい事ですよね。どんなに強くて高飛車な女も、全員貴方のセックスサンドバッグにできるのです。実に素晴らしい」
女神のクセに、まるで女を嘲っているような笑みだった。
いや、嘲笑されてるのは僕か。
「――どうか、されました?」
僕がなおも黙っていると、女神が心配そうに両目を寄せて言った。どうして黙っているのか解らないという顔だ。
なるほど確かにこのスキルがあれば僕は無敵だ。賢者にだって復讐できるだろう。
だけどそれならそれで、僕は……。
「僕は、彼女を恨めないんだ」
そう。
僕に復讐なんてできない。
だって僕は搾取される側の人間。レオンやプリムみたいな強い人間に怯え、一生飼われて暮らす家畜。それがアルス・ジェイ・ダマンドのあるべき姿なんだ。
「復讐できない?……フフ。それは、あなたの本音なのでしょうか」
僕がそう言うと、女神は優しく微笑んで言った。
「あなたの本音は、あなたの股間を見ればわかりますよ?」
たしかに僕の一物は、これ以上ないほど怒張していた。それはまるで、僕の怒りを代わりに訴えてくれてるように僕には思えた。
「クソ女なんかレイプしてやるって思ってますよね? それが自然なんですよ。だって貴方は本当は
下品な言葉に似合わない、慈愛に満ちた優しい口調。
彼女の言ってる事は、確かなんだろうか?
……。
考えるまでもない。
プリムをレイプしたい。
あいつのブタみたいに白いケツをぶっ叩いて、思うさまブチ込みたい。それからあのクソ生意気な顔に、ションベンみたいに僕の精液をぶっかけてやるんだ。きっとあいつは悲鳴を上げる。そしたらボッコボコにぶん殴って、僕の
その上で僕のために全てを捧げさせる。あいつの美貌も、賢者としてのスキルも頭脳も全て僕だけのために使わせてやるのだ。
そう思った時、既に勃起していた僕の
――ああ。
思い起こせばいつもそうだった。プリムに会った時もボコされた時も、いつだって一物は僕の本当の気持ちに応えてくれてたんだ。
今初めて自分の体と心が一心同体になった気がする。
「――僕は何をすればいい?」
「復讐をやり遂げて下さい。まずは賢者を犯す。それから義妹も。全ては貴方の思うがまま。股間の導きに従いましょう。女どもを犯して犯して犯し尽くすのです」
どうして僕の過去を知ってるんだろう?
その疑問については、彼女が本当に女神であるなら不問となる。
なぜならこの世界は彼女たち女神が創ったのだ。したがって知らない情報の方が少ない。
それならこれ以上の会話は無意味。
僕は僕のやりたいようにやろう。
そう思い、逆さのハートが刻まれた右手で女神の胸を揉みしだいた。
「なっ……!? 何を!?」
「解ってるんだよ。お前だって女だ。どうせ僕を利用するつもりだったんだろ?」
「……っ!!!」
僕がはっきりそう尋ねると、女神はその真っ白な顔を更に蒼白にした。
「やっぱり。黙ってるって事は、図星なんだね。僕を強姦魔に仕立てて何させるつもりだったの?」
「――バレてしまっては、仕方ありませんね」
すると女神がそう言って、初めてあの糸のような目を見開いた。賢者プリムのような、獲物を狙う詐欺師の目がそこにある。
同時にものすごい力で僕の肩を押さえ、額に白い手を当てた。その手の中に感じるのは賢者プリムに勝るとも劣らない圧倒的な魔力。
「当然、そんなものを持った男を放し飼いにしておくほど私も甘くはありません。魔法で洗脳を施し、あなたの人格を完全に消し去った上で私の奴隷にして差し上げます。抵抗は無駄です。大人しく私の術中に……ッ!?」
「ラブインバース!!」
僕は構わず叫んだ。大概のスキルの基本は、その名を叫ぶ事だ。
すると僕の顔に当てられた手がダラリと下がる。
僕が再度胸を揉みしだいても、もはや女神は抵抗しない。
いや、できない。
「くっ……やめなさい!! 下賤な被創造物のクセにッ!!!?!?」
怯えたような口調で罵る女神の唇に、僕は自分の口を近づけた。そして、
「舌出せ」
僕が耳元で囁くと、女神は一瞬の躊躇の後に口を開いた。その瞬間、右手の紋章がピンク色に明滅する。
ああ、たぶん嫌がったんだ。
それでラブインバースが発動して、今の一瞬で僕とのキスが大好きになったのだろう。今の今まで嫌悪していたのが嘘みたいに、夢中で僕の舌にしゃぶりついてくる。彼女の舌はプニプニしていて弾力があり、とても気持ちがいい。
だけど女にペースを持っていかれるのは腹立たしかった。
気持ちの良さとは反比例するように、どんどん怒りが湧いてくる。
ぶち殺したい。
蹂躙するのは僕であって女神ではないのだ。
僕はねじ伏せる様に女神の舌に自分の舌を絡ませながら、
「クソ豚。調子に乗るな」
女神を罵った。
すると右手の紋章がさっきよりも強く明滅し、女神は肩をビクンと震わせて急に内股になった。どうやら相当感じているらしい。ラブインバースの効果で罵倒すらも気持ちがいいのだ。
とろんと呆けたまま薄く目をパチパチさせている女神のアホ面を見て、僕はにやける。
下賤な被創造物のくせに。
それも金も屋敷もスキルもないド底辺のゴブリンもどきのくせに、僕は世界を統べる女神を相手に一歩も後れを取らず、それどころか完全な支配下に置こうとしている。
それが快感だった。
女である限り誰も僕には勝てない!
舌を突き出し、再度口を開けさせ、女神の口内をねぶるように舐め回す。
人間如きが本来触れられるはずもない女神の歯の裏を、舌の付け根を、口の天井部分を這うように舌をねじ込んでいく。
その度に女神の体が小刻みに震えるのが解った。
彼女が軽くイったことが本能的に、もとい女の匂いで解る。
やがて僕が口を離すと、
「ほ……ッ……本当のアルスはこんなに手荒に女を扱ってくれるのですね……ッ!?」
まさか褒められるとは思わなかった。
先ほどまでの敵意はどこへやら、女神の声は感謝と感激に打ち震えている。
蹂躙されて喜ぶなんて、女ってのはつくづくバカだな。
だけどこれでレオンがモテてた理由も解った。あいつは強いからモテたんじゃない。クズだからモテたんだ。だから僕もクズになろう。
『レオン以上のドクズに』。
僕は一物の声に頷くと、まだ震えている女神の体を神殿の床に叩きつけるようにして押し倒した。
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