幕間 音

 音が聞こえる。


「あああああああああああああ」

「ぎゃああああああああああああ」


 何かが何かを噛み砕く音。

 何かが潰れる音。

 何かが何かを言っている音。


 目の前に広がる光景は、阿鼻叫喚の地獄絵図。


 ――『彼』にはきっとそう見えてしまうだろう。


「ああああああああああああ」

「たすけてくれええええええええ」


 だけど、それでいいのだ。

 どんな絶望も、悲鳴も、憎悪も、叫びも、懇願すらも、

 私は一切関係ない。


 この世界を壊せば壊す程、『彼』を助けられる確率が高まる。

 むしろこんな世界なんか壊れてしまえばいい。


 たとえ『彼』にどう思われようとも、

 『彼』を助けれるならそれでいい。


 『彼』が私を意識すればするほど、こちらとしても好都合だ。

 その度に、私はもっと強くなれる。


 だからこそ、私は、


「おぎゃあ、おぎゃあ」


 何かが泣く音がする。


 見れば、何かが蠢いていた。

 小さな何かが泣いている。


 私はそれを指差した。

 途端、小さな何かが引き裂かれ、音が止んだ。


「……」


 どれくらい壊しただろうか。

 後、どれくらい殺せばいいだろうか。


 寄り添うように、魔獣達が側にいる。


「……」


 そっと自分の喉に触れる。


「……ぁ」


 どうせ出ないと思っていた『声』が、出た。


「ぁ、う……」


 だがそれも一瞬で、すぐに呼吸音もなくなってしまう。


 だとしても、今まで出なかった『声』が出たとすれば、

 それは、世界の終わりが近い証だった。


 ――もうすぐだ。


 もうすぐで私は、『彼女』に辿り着く。

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