第7話 誓い
俺はずっと誤解していたのかもしれない。
彼女の言葉に呆然とする中、そんなことを考えていた。
今まで俺は彼女を『聖女様』としか見ていなかった。
教会の『聖女様』に対する対応に憤りながら、
『彼女』を知ろうともしなかった。
これでは教会の奴らと同類ではないか。
「せ、」
『聖女様』と言いかけて、口を噤む。
このまま距離を置いたまま話したところで、
彼女はきっと耳を傾けてくれない。
傲慢かもしれないが、彼女の本音に触れて、彼女のことが少し分かった気がした。
だから、
「俺はずっと貴方を誤解していた」
「……っ」
「だけど、貴方も似たようなものだ」
「……え?」
「俺のこと、勇者としか見ていない」
責めるような言葉を投げかければ、彼女はこちらを見た。
届いたと、その目を見れば分かった。
「世界の為? そんなものの為に俺は『勇者』になったわけじゃない」
「勇者、様?」
「全部貴方の為だった」
悠長にしている時間はないのかもしれない。
それでも伝えたかった。
「俺は臆病だし、自信がないし、勇者様なんて言われるほどできた人間でもない」
ドラゴンを倒せと言われても、具体的にどうしろって言うんだ。
その悪態こそが、『勇者』として旅立った俺の本音だった。
「滅ぼせたのは貴方がいたから」
「え……?」
「貴方を死なせたくなかった。生きていて、欲しかった」
その為だったら無茶苦茶とも言えるドラゴン退治にも力を尽くした。
ある意味身勝手な想いに突き動かされていた。
しかし、そんな感情に世界が救われたのなら、それでいいんじゃないか。
開き直る自分もいたが、納得していない自分もいる。
――目の前にいる少女のことで。
「貴方の髪も瞳も、化け物なんかじゃない」
言うのは恥ずかしかったが、彼女に言った。
「とても、綺麗ですよ」
「……っ!」
伝わっているだろうか。
「貴方を自由にしたい。罪人だと言われる現状に我慢ならない」
「ゆう、」
「貴女が好きです」
「!」
息を呑む彼女の前に跪き、俺は手を差し伸べた。
「俺の手を取ってください。俺が必ず貴方を自由にして見せる」
彼女の目が揺らいでいるのが分かる。
迷うような仕草で、彼女は俺の手に手を重ねかけて、
地面が揺らいだ。
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