幕間 密談
目を開ければ、塔の牢獄の中にいた。
「変わらないね、ここは」
両腕を鎖に繋がれ、両足には足枷がつけられている。
窓も何もない鉄格子越しの景色だけが、自分に見える世界の全てだ。
「ここで私にできることはない」
最初から分かっていた。
何より、このままでも何の不都合もない。
「……ああ、来たね」
鉄格子越しに見える客人に、私は微笑んだ。
「首尾は……上々といったところかい?」
客人は一切何も口にせず、こちらを見ているだけだ。
「ああ、彼の方は問題ない。と言いたいところなんだけどね」
私は客人に告げた。
「今のままでは全く足りない」
客人はなおもじっと見つめている。
「このままでは危険だ。だが、君はやめるつもりはないんだろう?」
客人は何も言わない。
「そうだろうと思ったよ」
私は地面を見つめながら、再び客人を見た。
「足りなくても、方法はある」
客人に私は助言した。
「君には酷なことをしてもらう」
残酷な提案をした。
「彼――『勇者』を刺激する。具体的には、」
客人は提案を無言で聞き、静かに頷いた。
「すまない」
客人は静かに首を振り、その場を後にした。
「……」
酷な役割をさせている。仕方がないと分かっているけれど。
「すまない」
自己満足でしかない、謝罪の言葉を口にした。
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