第15話:想いと反応
「エーファお嬢様、危険でございます、ここでは矢が飛んでくるかもしれません」
オリヴァーは真っ青な顔をして諫めてきます。
私を愛するあまりの事なのでしょうが、少々邪魔です。
侍女頭のマドリーヌと女傭兵隊長のティーヌが堂々としているのに比べると、胆力がなさそうに見えてしまいます。
まあ、私の側にどれくらい長く仕えているかのかで態度は違ってしまいますね。
マドリーヌとティーヌは私の魔術を何度も見ていますからね。
「何の心配もありませんよオリヴァー。
幾千幾万の矢が降り注ごうと、全て私の傀儡が叩き落としてくれます。
空を観なさいオリヴァー、鳥の姿をした紙兵が千も空に羽ばたいていますよ」
私の言葉にオリヴァーが天を仰ぎ見ます。
そこには魔獣皮で創り出した紙兵が羽ばたいています。
一対一なら並の騎士が相手なら簡単に勝ってくれる強さです。
彼らが空にいてくれる限り、矢石の心配は無用なのです。
それはオリヴァーも十分わかっているはずなのですが、実戦で確認した事がないからでしょうか、凄く心配してくれます。
私への愛ゆえにというのなら、少々面映ゆいですね。
「分かっております、頭ではわかってるのです、ですが……」
やはり私への愛ゆえにですか、そこまで一途に思ってもらえるのはうれしいです。
でも今の私は離婚歴のある子持ちの領主です。
しかも大公の妹という立場になってしまいました。
好むと好まざるとにかかわらず、私の再婚は政略結婚になります。
いえ、結婚どころか誰を愛人にするかだけで権力バランスが変化します。
オリヴァーの想いを受け止める事はできないのです。
「分かっているのならもっと堂々としていなさい。
貴男の態度ひとつで、ウェラン大公国騎士団の実力と品格が測られるのです!
オリヴァー騎士隊長、配下を率いて城壁周辺を巡回しなさい!」
「はっ、直ちに行ってまいります」
私の言葉に自分の愚かな言動に思い至ったのでしょう、一瞬直立不動の態勢を取り、直ぐにキビキビと巡回に向かってくれました。
私の事が絡まなければ何の不足もない優秀な騎士隊長なのです。
いずれはウェラン大公国を代表するような騎士団長になってくれるでしょう。
私が独身を通し、愛人を作ったりしなければですが。
私が再婚したり愛人を作ったりしたら、傷心のあまり国を捨て家を捨て流浪してしまうかもしれません。
「わっはははは、そんな顔をしてやるな、あれでも随分立ち直った方なのだぞ。
お前が政略のためにドニエック公爵家に嫁いだころは、何時自殺するか分からないほど落ち込んでいたのだ、あれくらい笑って許してやれ」
隠れて見ていた兄上が話しかけてきました。
本当に悪趣味な兄上です。
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