第7話:襲撃・騎士隊長視点

 本当はこのような下劣な事はしたくない。

 騎士の誇りと名誉を損なう恥ずべき事だ。

 だが、この話を断れば秘かに処分されるのは明らかだ。

 自分一人だけでなく家族まで殺されてしまう。

 だから、騎士の誇りを捨てて家族をとった。


「みなもこのようは恥ずべき行為は嫌だろうが、これでも勅命だ。

 断れば自分ばかりか家族まで口封じに殺される。

 ここは家族の為に名誉を捨てて下劣な人間になるのだ」


 自分で口にしていて恥ずかしく情けない。

 ずっと騎士の名誉を言い続けてきたのに、このような事を口にするなんて。

 自分だけだったら勅命を受けた時に死んで諫めていた。

 あれほど聡明で誇り高かった陛下が、娘可愛さにこれほど愚劣な勅命を下すなんて、信じられないし信じたくないが、動かし難い事実なのだ。


「襲え、殺し、焼き、奪うのだ」


 誇り高かったドランク王国の騎士が、鎧を脱いで山賊に偽装し、何の罪もない、むしろ被害者の母親と幼子を殺す。

 しかも、山賊に見せかけるための、領民も巻き添えに皆殺しにする。

 情けなくて恥ずかして涙が流れてきた。

 それでも、勅命とあればやるしかないのだ


「「「「「うわぁああああ」」」」」


 天罰なのだろう、私は落とし穴に引っかかって、勢いよく落ちた。

 普通なら落とし穴に引っかかったと理解する前に地面に激突する。

 罠にはまって落下しているのが分かるほと、深い落とし穴だ。

 地面に叩き付けられたら即死する。

 俺達のような恥知らずに相応しい死にざまだろう。

 そう思い全てを諦めていたのだが……

 落とし穴の壁の一面が徐々の傾斜して、勢いを殺してくれた。


「よう、今度はあんたらか、ここは地獄の一丁目だから、逃げるのは諦めろよ」


 俺達騎士百人が地下深くに生きてたどり着いたのを、多くの人間が迎えてくれた。

 みんなボロボロの服装だが、痩せ細ってはいない。

 しかも地下だというのに薄明るいのだ。

 恐らくダンジョンの中なのだろうが、落ちた感覚から言えばかなり深層だと思う。

 よくこの程度の装備で生き残れているものだ。


「すまない、ここはなんていうダンジョンの何階層なのか教えてくれないか」


「残念だがそれは俺達も知らないんだ。

 エーファ殿とジュリアス殿を殺そうとして、落とし穴に引っかかったんだ。

 だが、ここも悪くはないぞ。

 かなり深層だとは思うんだが、全くモンスターはわかないし、食べ物もある。

 まあ、多分だが、エーファ殿の温情だと思う。

 殺す事なんか簡単なのに、殺さずにいてくれたんだと思う。

 任務を果たそうとして死んだのなら、家族が処罰されることがないからな」


 情けなく申し訳ない。

 エーファ殿の方が陛下よりも王侯貴族の誇りと慈愛を持っているじゃないか。

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