第8話:屈辱・エレオラ視点
私はドニエック公爵家のリオンと結婚し、無事に娘を産むことができました。
幸せの絶頂でしたが、どうしても気になる事がありました。
舅のドニエック公爵と姑のヘルミーナ夫人は優しく接してくれますが、家臣達はとてもよそよそしいのです。
いえ、時に悪意すら感じる視線を送ってきます。
「何か私に含むところがあるのですか、あるなら正直に言いなさい」
私は悪意の籠った視線を送る侍女に問いただしました。
「どうかお許しください、なにも含むところなどございません。
どうか、どうかお許しください、殺さないでください、お許しください」
「何を言っているの、こんな事で家臣を殺したりするわけがないでしょう」
「どうか、どうかお許しください、殺さないでください、お許しください。
家族皆殺しだけはお許しください、殺すなら私だけにしてください。
陛下に告げ口して、一家皆殺しするのだけはお許しください」
ここまで言われて、ようやく気がつくなんて、私は愚かすぎました。
私がドニエック公爵家に嫁ぐにあたって、家臣が一家皆殺しになっている事も、それに国王陛下が関係している事も、全く気がついていませんでした。
子供を乳母に任せて社交に復帰した時も、陛下や兄上達が警戒するように忠告してくださった者達、口の上手い者達しか近づいてきませんでした。
信用できる誇り高い貴族と紹介していただいた方々は、私どころか、陛下や兄上達からも距離を置いていました。
「ケット城伯ローレンツ卿、何故私や陛下を避けるのですか」
陛下や兄達から、王国で一、二を争う誇り高い貴族と聞いていたローレンツ卿なら、真実を話してくれると思って聞いてみました。
「既婚のリオンを誑かして子を孕み、先妻エーファ殿と跡継ぎのジュリアス殿をドニエック公爵家から追い出した上に、ドニエック公爵が詫びに割譲した領地も財産も奪い返した恥知らずに近づくなど、恥以外の何物でもない。
主家の血筋からの命令なので答えさせていただいたが、本来なら近づくのも汚らわしいことでございます、エレオラ王女殿下。
王都の空気は穢れに満ちていて、身体を損ねてしまった。
しばらく領地に戻って静養させていただきますと、陛下に御伝言いただきたい。
ああ、それともう一つ、エーファ殿とジュリアス殿に度々刺客を放ち、最近では騎士団を山賊に偽装して襲っておられるようだが、私にそのような事を命じられるなら、貴族の誇りにかけて剣を持って手向かいいたしますとね」
私は、情けなくて恥ずかしくて腹だたしくて、最初の原因が私なのにもかかわらず、陛下を激しく責めてしまいました。
「どういう事ですか、陛下。
エーファ嬢に譲られた領地も財産も奪い、刺客まで送っているという話ではありませんか、恥ずかしくて恥ずかしくて、もう二度と社交の場に出られません。
これほどの恥をかかせて、私の事がお嫌いなのですか」
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