夫が浮気をしたので、子供を連れて離婚し、農園を始める事にしました。

克全

第1章

第1話:不倫浮気

「母上、助けてください、母上、このままでは殺されてしまいます。

 母上、私はどうしたらいいのでしょうか、母上」


 夫のリオンが姑のヘルミーナ夫人に泣きついています。

 もうこれで何度目でしょうか、少なくとも二十では収まりません。

 その度に姑に泣きついて、事後処理をしてもらっていましたが、今度は相手が悪すぎて、姑の力でも、いえドニエック公爵家の権力を使っても黙らせる事は無理です。

 何せ今度の浮気相手は、王家なのですから!


「エーファさん、今度は貴女にも覚悟を決めてもらわなければいけません」


 身勝手な姑らしい言い方ですね、でも、聞いてやる義理はありません。

 

「あら、私にはとんと意味が分かりませんが?」


「白々しい、エレオラ王女殿下を妊娠させた以上、リオンは責任をとって殿下と結婚するしかありません。

 貴女とは離婚してもらうしかないではありませんか!」


 身勝手な事を言われても聞けませんよ、おかあさま!


「教会では離婚を禁止していますし、浮気はもちろん、不倫は絶対に許しません。

 いい加減リオンも自分の行いに罰を受けるべきです。

 王女殿下を誑かして妊娠させた以上、死を持って償うべきです」


「ヒッィイイ、嫌だ、死にたくない、母上、助けてください、母上」


 本当に醜い男、初夜の一度だけとはいえ、こんな男に身を任せた事が恥ずかしいですが、そのお陰で子供を授かったのも確かです。

 相手がどうしようもない愚劣な男でも、父親である事は間違いありません。


「おお、大丈夫、私が必ず助けてあげます。

 エーファさん、それでも貴女はリオンの妻ですか!

 平然とリオンに死ねと言うなど、貴女は血も涙もない女ですね!」


 売られた喧嘩は何時でも買わせていただきますよ、おかあさま。


「結婚してわずか一年の間に、二十回以上も浮気をして、その度に母親に泣きつくような情けない男でも、夫は夫ですが、それを離婚しろと言ったのは、貴族の常識も知らない貴女ですよ、お義母様!」


「キィイイイイイ、私はゲセル侯爵家出身なのです。

 たかだか辺境伯家出身の貴女に、貴族の常識を言われる覚えはありません!」


「では、その大層なゲセル侯爵家に助けていただいては如何ですか、お義母様。

 私を無理矢理追い出すのなら、ウェラン辺境伯家との戦争を覚悟しているのでしょうね、お義母様。

 私のお兄様は、ゲセル侯爵家と違って、私のためならば戦争も辞さない方ですよ。

 以前もリオンの浮気が止まないのなら、二度と浮気ができないように、切り取ってやると言ってくださいましたから」


 私がそう言ってリオンを見ると、怯えて小さくなってしました。

 やれやれ、本当に情けない男ですが、こんな男でも可愛いジュリアスの父親です。

 ある程度の所で妥協しなければいけませんね。

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