第21話:圧勝

 モンタギュー王国軍が矢を射かけ石を投げて来ますが、全く効果ありませんね。

 物理防御魔術と魔力防御魔術を展開していますから、矢石の中に魔術攻撃を潜ませても全く問題無く護りきれます。

 僅かな魔力量とは言え、本当はこんな事に魔力を使いたくはないのですよね。

 できれば魔力は全て農園に使いたいのですよね。

 こんな争いに魔力を使うのは、もったいないし不毛だと思うのです。


「ウェラン大公閣下、攻撃の許可を願います」


 脳筋の武闘派貴族から派遣された騎士が、逸って兄上に出陣を願っています。

 馬鹿は嫌いですが、やる気のある所は認めましょう。

 全く戦術も戦略も分かっていない馬鹿ですが、使い方によっては役に立つかもしれませんから、直ぐに切り捨てる気はありません。

 それに他家の騎士ですから、気に喰わなければ帰らせればいいのです。


「もっと戦略戦術を考えろ、今討って出たら損害を出すだけだ。

 戦略戦術が分からないのなら、黙って待っていろ。

 一番実力が発揮できる時に出陣させてやる」


「はっ、申し訳ありません、宜しく御願いいたします」


 愚かな武闘派ですが、命令無視をするようなことはなさそうです。

 他の貴族家騎士家からの応援に来ている者達は、できるだけ損害を出さないように命じられているのでしょう、全員ほっとしています。

 多分私が彼らと同じ立場だったら、同じ事をするでしょうね。

 幸い私には圧倒的な魔力と傀儡術従魔術があるので、兵力が不足する事はありませんが、普通は領民から強制的に募集して兵力にします。

 その領民が死傷すれば、翌年の収穫量が大きく減ってしまいます。


(敵、来た、殺すか)


(いえ、貴方たちは今まで通り魔境の狩りに専念してください。

 襲ってきた敵は、傀儡達に取り押さえさせて人質にします)


(分かった)


 領地を護ってくれている魔獣達から連絡が来ました。

 彼らとの絆はとても強くて、どれほど遠くても意思の疎通ができます。

 だから離れていても的確な指示が出せるのです。

 魔獣はどれほど強くても生物ですから、死傷する可能性は皆無ではありません。

 可愛いあの子達が傷つき死ぬなんて我慢できません。

 ですが傀儡には痛覚もなければ魂もありません。

 だから安心して戦いに派遣させる事ができます。


 王国軍は騎士団が壊滅しているからでしょう、国民兵が僅かに千ですか。

 私の領地に近い王家派の領民兵が、二十二家併せて五千ほど。

 私が領地を離れているなら、この程度の兵力でも勝てると思ったのでしょう。

 馬鹿としか言いようがありませんが、あの王と貴族ならこの程度でしょうね。

 全員捕虜にして開拓に使ってあげましょう。

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