第11話:ダンジョンコア

「ダン、今いいかしら?」


 私はダンジョンに入ってダンジョンコアに話しかけました。

 従魔にしたダンジョンコアに、密かに寝室にダンジョンへの入り口を設けてもらっているのです。

 この地にあった強力で広大なダンジョン、そのコアを従魔にして領地のために働いてもらっています


 今まで通り魔獣や獣を誘い込んで生命力と魔力を喰らうための入り口。

 元王国密偵と元王国騎士が、穏やかに家族と一緒に農夫として暮らす、地下深くの農園ダンジョン層に直通する入り口。

 そして万が一の場合には私の逃げ道となり、普段はダンジョンコアとお話ししたり、魔力を与えて餌付けするための入り口。


「はい、大丈夫です、ご主人様」


「ダンに新しい農園ダンジョン層を創ってもらいたいのだけど、魔力は足りているかしら?」


 ダンジョンコアのダン、単純すぎる名前ですが、従魔が多過ぎて名前を付けるだけでも大変なのです。

 それはどうでもいい話ですね、問題はダンジョンの力の問題です。

 普通のダンジョンは、入り口から誘い込んだ獣や魔獣や人間を争わせて、その時に発生する魔力や生命力、時には遺骸を吸収して力にします。


「ちょっと苦しいです。

 この前いただいた魔力がありますから、創る事はできるのですが、その後の運営に使う魔力が心配です」


 ダンの言う事ももっともです。

 深層に農園ダンジョン層を設けた事で、吸収できる魔力や生命力よりも維持に使う力の方が多くなっているのです。

 ここにまた新たな深層農園ダンジョンを創り出したら、完全に収支のバランスが崩れてしまい、ダンが死んでしまうでしょう。

 本当は王家ゆかりの者達を皆殺しにして、ダンの力にすべきなのですが……


「分かったわ、ダンが蓄えておける最大の魔力を今分けてあげるから、直ぐに創り出してくれるかしら。

 創り出してくれたら、その為に減った分の魔力を直ぐ分けてあげるわ。

 それとこの前創り出してくれたように、王家が攻めてきた時に、は落とし穴を創り出して農園ダンジョン層に隔離して欲しいの」


 必要なら人殺しも厭わないけれど、回避できるのならやらないで済ませたいわ。

 ジュリアスに自分の母親が虐殺王だと思われたくないもの。

 恐怖で領民を支配するのも一つの方法だけれど、できれば慈愛と仁徳で慕われて領民を統治したいわ。

 その方が次代を引き継ぐジュリアスのためになると思うから。


「分かりました、ご主人様、直ぐに創らせていただきます」


 私から莫大な魔力を与えられたダンは、直ぐに二つ目の農園ダンジョン層を創り出してくれたようです。

 これで王家軍が攻め寄せて来ても何の心配もありません。

 少しでも心配な事があるとすれば、兄上とオリヴァーの事ですね……

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