第17話:ダンジョンコアのお食事

「すまん、ごめん、悪かった、全面的に俺が悪い、だから許してくれ」


 私が本気で怒ると、兄上は直ぐに平身低頭で謝ってくださいます。

 敵対する相手なら、自分の考えを変えることなく情け容赦なく潰されるのですが、私が怒ると自説にこだわることなく謝ってくれます。

 こんな風に直ぐに謝られると、これ以上怒れなくなってしまいます。

 こんな兄上を狡いと思うと同時に、愛されていると幸せを感じてしまいますから、兄妹という関係はいいものですよね。

 ただ確認だけはしておかないと、兄上は何をしでかされるか分かりません。


「ではどうされるのですか」


「処刑して見せしめに晒すよ、ただその後でダンジョンに放置する。

 エーファもダンジョンに吸収させるのまでは嫌がらないだろ?」


「……」


 正直とても複雑な心境です。

 ダンジョンコアも従魔の一種ですから、人間を吸収させるのは嫌です。

 でも魔獣に直接食べさせるほどの抵抗感はありません。

 輪廻転生という考え方や、食物連鎖の考え方から言えば、私よりも兄上の考え方の方が正しいのです。

 人間だけが特別と考えて、そのサイクルから外す私の考えの方が傲慢です。

 それに、兄上が考えておられる事は……


「わざわざ私の領地まで遺体を運ばせるのですか?」


「まさか、エーファが今考えている事をやるのだよ。

 エーファのダンジョンに子供を作らせて、支配下に置く領地に住まわせる。

 各領地の領主城砦の地下にダンジョンを作らせて、今後はそこに死者や残飯や糞尿を捨てさせて、ダンジョンの餌にする。

 それほど大きく強いダンジョンにはならないだろうし、今までのように道が糞尿まみれになる事もないし、遺体がアンデッド化する心配もなくなる」


 やはりそういう御考えでしたか。

 私も衛生面と防衛を考えてダンジョンに拠点を移しました。

 兄上にはその事を報告していましたから、新たな領地を手に入れる事になれば、同じ方法を導入しようとされるのは当然です。

 領民の数に応じてでる死者や残飯や糞尿の量は増減しますが、村や街が栄えれば栄えるほどダンジョンは大きく強くなるでしょう。


「分かりました、ここでの防衛戦に決着がついたら、領地に戻ってダンジョンコアに子供を作らせます。

 それともここの戦いを始める前にダンジョンコアに子供を作らせますか?」


「また私を試すような事を言う。

 まず愚か者共がエーファの領地に攻め込まなければ事は始まらないよ。

 眼の前にいる愚か者共が攻めかかってきて、それを聞いた愚か者共が動き出す。

 いや、少しでも知恵があれば、日にちを合わせて攻めてくるな」


 やれやれ、隣国も有力貴族も、全員兄上に手のひらで踊らされていますね。

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