第19話:剣舞
「なかなかやりますね、形だけの騎士や貴族など足元にも及びませんよ」
私は領民兵の男と剣舞を演じていた。
演じているとはいっても、真剣を使った危険極まりないモノだ。
ろくに剣の訓練もしていない、某子爵家の傍流などのような、実際の戦で役に立たないカカシとは違います。
まあ、兄上も私も今回の参陣者にカカシ以上の事は求めていませんしてた。
各家の旗印を抱えて城壁に立っていてくれれば十分なのです。
「めっそうもございません、私などでは、生まれた時から騎士になるべく鍛錬してこられた、貴族や騎士の方々の足元にも及びません」
灰褐色の瞳には真実そう思っているのが分かる真剣さがありました。
ですが、ロディと名乗った領民兵の心の中にある騎士像とは、自分達を治めるモリソン騎士家のバーツ卿なのでしょう。
某子爵家の傍流のような屑は貴族や騎士には数えていないと思います
褐色に焼けた肌から、日頃は屋外で鍛錬しているか農作業に汗を流しているのが分かります。
茶髪が焼けたように見えるのもその為でしょう。
「そう、貴男の仕えるバーツ卿はとても立派な騎士のようね。
私も気にかけておきますが、兄上にもよく伝えておきましょう。
で、これはどうですか!」
私は今までの攻撃よりも少し鋭い突きを放ちましたが、楽に受けてくれました。
こういう努力を積み重ねて強くなった方と剣を交えると、ワクワクするくらいうれしくなりますね。
この舞踏会場にいる見る眼のある貴族や騎士は、領民にすぎないロディの剣技を見て、モリソン騎士家のバーツ卿の力量を認める事でしょう。
現に多くの貴族や騎士のロディを見る眼が剣舞を始めた時と全く違っています。
ただそのような貴族と騎士が極端に少ないのが残念です。
「私の技などエーファ嬢に全く通じないのは分かっておりましたが、それでもここまで力量に差があるとは思っておりませんでした。
私が尊敬する主君に比べさせていただくのもおこがましいことでございます。
これで王家がなす術もなく敗北した理由がよく分かりました」
陰湿な王家の攻撃を退けたのは、私の武芸ではありませんが、貴族や騎士にそう思わせるのもいいかもしれませんね。
王家を撃退した事は間違いありませんし、その事は貴族や騎士も事実として知っていますが、噂の多くは兄上が派遣した騎士団の力という事になっています。
今回私が傀儡を使って隣国を撃退する事で、私の魔術力を敵味方に知らしめる予定ですが、その前に私の武芸を知らせておくことも大切かも知れません。
「さあ、私と剣舞を演じてくれる方は他にいませんか!」
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