第14話
越えられない閾
相容れない識
隔てるは決定的な差違
「あれって……戮訃?」
思わぬ言葉に、フェイはぎょっとして細い指で指された上空を見上げた。
イヴェールが示すその先に、確かに黒い影があった。大きな翼を広げ、旋回している。色と得物から、戮訃であることは間違いない。
問題は、その戮訃が誰か、である。
緊張を悟られないようにしながら、じっと目を凝らす。高度が高く、色が空に殆ど同化してしまっているのでなかなか判別が付かない。
ニースはそれほど背が高くなかった。フェイよりも少し低いくらいか。見上げた先の影は、もっと大きく見える。そしてなにより、翼以外に靡くものがあるようだった。恐らく、髪だ。
彼ではない。そう結論に至ると、急にホッとした。折角知り合った友人を失う虞はなくなった。
だが、実はまだ危機は去っていない。
誰だか解らない戮訃が、まだ頭上にいる。たった一人だが、その一人が今の状況には脅威になりかねない。
「さっき遠慮無しにぶっ放したからなぁ。流石の戮訃も気付いてんだろ」
乾いた血を引っ掻いて毟りながら、シンはまるで他人事だ。いつもだったらそれは余裕と取れるが、今の彼にそんなものがあるとは思えない。危機感がないだけだ。
その証拠に、
「今は相手にしたくねぇな」
と、後からぼやいている。腕の傷は塞がったが、まだ頭痛はするらしい。時折眼を細めては側頭部を押さえている。
つまり、この場に戦力は皆無。
近くに上空から見下ろせない隠れ場所があればいいが、すぐには思いつかない。店に入るにしても、シンは片腕を服もろとも血まみれにしている。この状態ではいつも以上に人目に付いてしまう。無理だ。
「じっとしてようぜ。なるようになるさ」
手持ち無沙汰になったらしく、足を投げ出して暇そうにしている。喫煙者だったら煙草を取りだしてくゆり始めそうな落ち着き様だ。
そして、やはり当事者以外は心穏やかではなかった。フェイだけでなく、イヴェールも戮訃の動向を気にしている。戮訃にとっての咒法師が何であるか、恐らく彼女も知っているのだろう。
「ん?」
表通りを見て、シンが首を傾げた。何だろうとフェイは振り返る。すぐには分からなかったが、壁から手が生えている。正確には、通りの向こうからこちらに見えるように誰かが手招きしているのだ。
ユンならばこんな判りにくいことはしないだろうし、クロードはそもそも進んで接してこない。他にこれと言った知り合いは居ないので、誰もその手を信用しなかった。
手は暫く呼び寄せるようにひらひらしていたが、余りに無反応なので焦れったくなったらしい。一度引っ込んでしまった。
「なんだ?」
シンが訝しく思うものを、こっちが判るわけがない。
さあ、と返してその後の様子を窺った。
と、今度は頭だ。袋小路を覗き込んで、
「ちょっと、見えてたでしょ」
若い人間の女性だ。見えてた、とは手のことらしいが、呼ばれる理由がないので動かなかっただけだ。
「あんたたち、戮訃に追われてんでしょ? あたしのウチに来なさいよ。匿ってあげる」
ありがたい申し出だが、すぐに飛びつくほど世間知らずではない。
人間であれば戮訃より害はないが、
「シン。どうする?」
「自分で何してんのか解ってんならいいけどな。あとで騒がれたんじゃ余計見つかるし」
基本的に人間を信用していない。偶に異種族に興味を持って近づいてくる人間もいるが、最後には皆同じ台詞を吐いて離れていく。それが面倒で鬱陶しいから来る者を拒み、離れる者を喜んで突き飛ばすのだ。シンの場合は若干極端だが、フェイも思うことは同じだった。何も気にしない奇特な老人を抜かして、基本的に人間相手にいい思いをしたことがない。
「ほら。早くしなさいよ。そこのあんた、咒法師でしょ。怪我してんのに戮訃に見つかったら、殺されるよ」
一応、何を相手に喋っているのかは解っているようだ。
「ただの莫迦か、救いの女神か。戮訃に魂売ってないことだけを祈るね」
最後に嫌な可能性を示唆しつつ、シンは立ち上がった。誘いに乗るらしい。
動き出したのを見て、女性が初めて全身を見せた。顔しか出していなかったのは、咒法師の機嫌を損ねたときの回避のためとも見える。
長めの茶髪を高い位置でポニーテールにした、少し小柄な人間だった。性格は一見するに明朗快活。偽善者でないことを願う。
「鴉と通じてたら奴らと一緒に合挽にするからな」
「やめてよ。あんなのと関わったって、何も良いこと無いし」
「良いことあった身の程知らずが昔、居たもんでね」
「……」
えげつない話になりそうだったので、誰もその後のことは訊かなかった。訊かずとも、それなりの制裁をしたのだろう。想像に易い。
案内されたのはすぐ近くのアパートの一室だった。三階建ての二階。角部屋だが窓が少ない。コンクリート打ちっ放しで雰囲気が暗めなのは一般的な内装だ。
「イヴェール」
「なに?」
「さすがに俺の服の予備とか、持ってないよ、な?」
「引出ごと持ってきて引出ごと出しちゃったから……。今度から持って歩いた方が良さそうね」
シンが唯一不便なのは、イヴェールのように身体の中に倉庫を持っていないことだろう。血の臭いをさせた服を捨てたいが、それでは半裸になってしまうので出来ずにいる。
「なあ、あんた。洗濯機貸して」
「いいけど、そのコートも洗うの?」
「いつも洗ってるし」
「そう。でも、すぐには乾かないよ?」
「乾かすのはすぐだから」
聞いていて色々とびっくりだ。どう考えても専門店で洗った方が良さそうなコートを、いつも自宅の洗濯機で攪拌していたらしい。それほど草臥れた様子はないのがまた不思議だった。反則技で乾かすことで驚きの仕上がりにしているのだとしたら、店の方は商売あがったりだ。
洗濯機にシャツとコートを放り込み、腕の血を洗い流して戻ってきたシンは、女性が二人もいるというのに一つの遠慮もなく上半身裸だ。今回付いた傷は、やはり大きな線となって肘上まで残っている。右腕以外には一つも傷がないので、余計に目立つ。
「右腕、酷い傷痕ね。百戦錬磨の強者、ってやつ?」
「これは俺の問題」
何があっても仲良くする気はないらしい。ぶっきらぼうに言い捨てると、シンは空いていたソファに断りもなく腰を降ろした。
「そんなに嫌わないでよ。恩着せしようなんて思ってないんだから」
女性は一度台所に入ると、人数分のカップにインスタントコーヒーを入れて戻ってきた。
「ほら、二人も座って」
と、フェイとイヴェールを椅子に促すと、カップを配って歩いた。
慣れた安い香りがする。
最後にシンにカップを差し出し、
「あたしはパオラ。ブンヤでもガクシャでもない」
「内通も密告も興味本位もお断りだ」
「だから、そんなんじゃないって」
「じゃあどんなスキモノだ? 自分にない力に憧れちゃう夢見がちか?」
「口が悪いのね。そんなに人間が嫌い?」
「人間は人間以外は嫌いだろう。たとえそうじゃなくても、俺は人間とは馴れ合いたくなくてね」
「魔法みたいなの使える以外は人間と同じじゃない」
「稀少な意見だ」
と言いつつも、差し出されたカップをシンは受け取ろうとはしなかった。仕方なく、パオラはサイドテーブルにカップを置き、ダイニングテーブルの自席に座った。
シンとパオラの間で空気が重い。片方は歩み寄ろうとしているのに、片方は頑として受け付けない。
柔和でいようとすれば出来るはずなのに、半裸の男はそれをしない。こんなに人間嫌いだったとはフェイも知らなかった。表で絡まれてもいつも適当にあしらってやり過ごすのに、今は敵意さえ見せている。
過去にミンチにしたらしい人間のことを根に持っているのだろうか。
だが、格下相手にぐずぐずと引きずる男ではない。好きになれず信用も出来ないのは解るとして、わざわざ関係を険悪に持っていこうとするのは解せない。
「二人も人間じゃないのよね。……家族?」
「他人の寄せ集め。一緒に暮らしてるけどね」
「じゃあ、お父さん、人間以外には優しいんだ」
「誰が親父だ。ふざけんな」
わざわざ入ってくることもないのに、飛び込んできて不快そうな顔をしている。扱いにくい半裸は、いつからか眉根を詰めて片手で頭を押さえている。
「シン? 頭痛、まだ辛いの?」
気が付いたイヴェールがカップを置いて立ち上がり、シンの前に膝を付いた。両手で包むように黒髪に触れ、時折手櫛で髪を梳く。
フェイはパオラと二人で彼らの様子を遠巻きに眺めていた。
こうべを垂れて無防備なシンの表情が、心なしか緩やかなものに変わっていく。目を閉じて、されるまま。
洗礼をし、それを受けている者のような、不思議な光景に見えた。
「あー……。下手な薬より、効く……」
「え、ちょ、ちょっと、シンってば」
「だめ……眠い……」
「待って。支えきれないよ」
フェイが飛んでいったとき、シンは既に眠っていた。図々しいというか、欲求に忠実というか。
毛布を貸して貰い、やっと黙った男をソファに寝かせた。ぴりぴりとしていた空気が無くなって、途端に居心地が良くなった。平和な寝息が微かに聞こえてくる。
「何だか大変そうだね」
「ごめんね。助けて貰ったのに。いつもはあんな口、利かないんだけど」
「あんまり気にしてない。人間だって嫌われる理由があるのは解るもん」
気を遣うフェイの前で、パオラは笑いながらコーヒーを啜った。
「興味本位はホントだし。少し前から時々騒がしかったから、もしかしてって思って仕事休みの日に出歩いてみたら、あんた達が居るんだもん。戮訃と違って、ちょっと知り合ってみたかったから」
結果的にこちらは助かった。とはいえ、シンが聞いたら激昂しそうだ、とフェイは内心思う。
「いいことしたかったの。そういうのに飢えててさ」
開けっ広げにパオラは語る。
「偽善者よ、偽善者。自己満足。だから嫌われるのもあるんだろうなぁ」
悪びれた様子はない。むしろすがすがしいほどだ。
「あー。でも、ものの見事にフラれたなぁ。あんた達はどうなの? やっぱり人間は嫌い?」
「私は……別に……」
「俺も。でも、あんまり良い思いしたこと無いから、どうしても……」
「そっかぁ。残念。友達になれたら良かったなぁ」
何も始まっていないのに、もう終わってしまったかのような言葉に、フェイは少し口を尖らせた。
「友達になら、なれるよ。きっと。それはお互いの努力と気持ち次第だろ?」
「いいこと言うね、少年」
頭を撫でられ、そう言えばまだ自己紹介してなかったと思い至る。
洗濯はそろそろ濯ぎに入る頃合いだろうか。その間、名乗ったのはパオラ一人で、シンに至っては洗濯までさせて貰ったのに悪態をつき、挙げ句痛みを癒され眠っている。
関係を発展させるための第一歩。名前を知り合うこと。
それから洗濯機が止まるまで、眠り続けるシンを他所に、三人で他愛のない話を続けた。
自分たちのこと。相手のこと。
知っていること。知らないこと。
同じこと。違うこと。
*
モーター音が消えたのを察し、シンは目を開けた。
イヴェールのおかげで痛みはもう消えている。頭痛が引いていく心地よさに始めのうちは本当に眠っていたが、後半は狸寝入りをしていた。起き上がっても打ち解けている三人の邪魔をすることは明らか。ここに居ないことにしておいた方が楽だと踏んでのことだ。
洗濯が終わってしまえばここに留まる理由はない。
むくり、と起きあがり、会話が止まった三人の脇を抜けて洗濯機から服を取りだした。コートは黒なので問題なし。シャツも殆ど綺麗になって、それ一枚で出歩かないのならば何の支障もなくなった。後は乾かすだけだ。
居間に戻り、窓を探した。ベランダでも玄関でも良かったが、丁度先程まで寝ていたソファの後ろに大きめの窓があった。
服をひっさげたまま、窓を開ける。
「何してるの」
「服の乾燥。すぐ戻る」
「戮訃が居たらどうするの」
「大丈夫。奴ら、そんなに気長じゃねぇから」
立ち上がりそうだったイヴェールにそう言い残し、シンは窓枠に足をかけると外に出た。
上昇し、屋上に立つ。
黒い空に戮訃の気配はない。もし居たところで、もう問題なかった。頭痛は引いた。乱れたリズムも取り戻している。逃げる理由は何処にもない。
まずはシャツから。コートは左肩に掛け、シャツの肩を持つ。干す前に皺を伸ばす要領で、二、三回はたくと作業終了。コートも同じようにして、一瞬で水気を払った。
種を明かせば熱を加える術をほんの僅かに使っているだけだ。加減を間違えると服を燃やしてしまう。昔は良く服が灰に変わったものだと懐古してみる。
未熟だった頃の自分を懐かしみながら服を着た。
袖を通しながら、改めて傷を見る。
正直、ここまでの傷を負うとは思っていなかった。あれ以上に波長が合わなければ、更に頭痛が制御を乱せば、腕が壊れると言うより、腕が吹き飛ぶ。今回も皮膚と肉が裂けただけで済んだのは幸運だった。
「だからって、気をつけるのも限界だ……」
相手がこちらの体調に合わせてやってきてくれるわけもなく。頭痛の原因も治療法も分からない。
「先制攻撃しかないか……」
早くどうにかしようと思いながら、一週間以上が経っている。相手が動いてこないのを良いことに、こちらもまだ何の策も取っていない。無闇に解決を引き延ばしているのは、もしかしたら自分かも知れなかった。
頭痛が続き、面倒臭いのもある。ネノーアに関わること自体が頭痛の種だ。
イヴェールも踏ん切りが付かずに右往左往している所がある。目を逸らした隙に思いも寄らぬ事をしそうで、これもまた懸念事項だ。
フェイが一番害がない。本人の自覚はいざ知らず、キアに好意を寄せている。だからといって突飛なことはしないので、見守るに尽きる。
ユンは無害。クロードは適当に虐めていればいい。
目下の問題は自分自身と女二人。解決順序は適宜。
「ふう」
三階建ての屋上とはいえ、澄んだ空気とはほど遠い。その澱みを肺に含み、更なる澱みを吐き出す。
身体の弱い人間は時に肺を傷める空気。成長さえ蝕む光のない空。
この陰鬱な景色に慣れてしまって久しい。
「……」
何気なく見上げた変わり映えのしない黒に、違う景色を想い描いた。暫く見ていない風景。
口角が上がっていくのを感じた。欲が湧いてくる。
「一段落付いたら、遊びに行くかな」
忘れていた小さな野心が、僅かに頭をもたげた瞬間だった。
「その前に、下調べしないと」
全ては手前の問題を片付けてからだ。そうと決まると、心も躍る。部屋に戻る途中から自動で策略が巡り始めた。動き始めてしまえば愉しくて仕方がない。多少の面倒ならば解決してやろうという気にもなる。
我ながら呆れるくらい単純だ。
「どっか行っちゃったかと思った」
「考えごとしてた」
愉悦を得るための謀略を、とは言わない。口を尖らせたフェイには申し訳ないが、全てを語るわけにはいかないのだ。
「さ。もう行くぞ」
不満が上がりそうな空気が一瞬漂ったが、終ぞ誰もシンに向けて口を開かなかった。
礼を言いつつ別れを惜しむフェイとイヴェールを先に表に出す。シンが出ようとする後ろを、パオラが見送りに付いてきた。
彼女には何の罪も恨みもないが、態度を変えるつもりもない。
「あんたも、つまんないことに首突っ込むのやめろよな。早死にするぜ」
「じゃあ、今回はラッキーだったってことね」
「そういうこと」
じゃあな、と手を振って出ていって、暫くしてからドアが閉まる音がした。ずっと見送っていたところを見ると、言いたいことは伝わらなかったと解した方が良さそうだ。作戦失敗。
「ねえ、シン。なんであんなつっけんどんだったのさ。お礼も言ってなかったし」
中断されていた用事、買い物に往く道でフェイが不満そうな顔を向けてきた。
どうにも伝導率が悪い。はっきり言わず回りくどいことをするからだと、原因は分かっている。
「人間が、咒法師に好印象持ってちゃ困るんだよ」
「なんで?」
なんで。疑問は尤もだ。
「俺は優しいから良いけどな。基本的に目障りだと消したくなる気質でさ。怯えてて貰った方が視界が広くなるし、助かるって言うか」
という表面的な話。
「ここで暮らす上で殺して歩いてちゃ面倒だろ?」
という若干の本音。
二人の表情が徐々に険しくなった。紛れもなく幻滅している顔だ。どんなに幻滅されても、これが咒法師の性だと言うしかない。それが事実だ。
「……それだけじゃないよね、実際。ね?」
「まあ、な」
人間がどうなろうと、本当ならば関係ないことだ。なのに、時々こうやってお節介をしてしまう。
――何でかなぁ。
相反する自分の存在には大分前から気が付いていた。人が言う善と悪、そして無関心の全てが同時に出てくることさえある。一貫しているつもりが、時と事柄によって顔を替えるのだ。気分屋、というレベルではないことが時にある。
「シンって、基本的に優しいのに、時々悪魔みたいだよね」
「どっちが表かわかんないぜ?」
一度ゼロになってしまった生き物だ。何が本性かなど当人にも解らない。
フェイだって、もしかしたら土台は不良少年かもしれない、ということだ。
まあ、一番の理由は何かといえば、
「ここは人間の世界だ。一緒に暮らせても、交われなくなる境界がどうしてもある。人間は、その線が解らないからこっちから引いてやるしかないんだよ」
無闇に入ってくるのならば追い出さなければならないこともある。それが互いの為だ。
人間の中で生きざるを得ない者はある程度無害なので、一概にはくくれない。だが、咒法師は別だ。破壊衝動が極めて強い一匹狼。気位の高さも群を抜く。例外はあるが、協調性は望めない。
勿論、シン自身も含め。
「じゃあ、人間の世界じゃない世界って、何処にあるのさ」
「在るところに在るんだよ。ちゃんと、な」
「……わかんないって」
解るはずもない。解らないようになっているのだ。
「ま、今は食いたいもんの事にでも頭使っとけよ」
「またなんか隠してるんでしょ」
「そのうち嫌でも解るさ」
永遠に何かを隠し続けることは難しい。
綻び一つ無い完全無欠など有り得ない。
消化不良な顔をしているフェイと黙したままのイヴェールを従え、目的地へと向かった。彼女はパオラの家を出てからずっと口を閉ざしている。正しい選択だ、とシンは評価していた。いくら記憶を無くしたと言っても、全てが消えているわけではない。フェイの疑問の答えも恐らくある程度は知っている、若しくは覚えているだろうし、それを易々語ってはいけないことも解っているのだろう。
イヴェールは語ってはいけない。地獄から逃れてきた身なら尚更だ。当人もそれを解っていてこの話題に関しては沈黙を通しているのだろう。
聡くて結構だ。
足は軽い。気を抜けば浮いてしまいそうなくらい軽い。
自分へのご褒美も考えつつ、この茶番の最終形を頭に描いた。
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