女の子の部屋でドキドキゲーム時間 6
「本当に……? やったー! でも、私、本当に久しぶりにやるから、緊張してきたちゃったよ~」
そんな、彼女の純粋な喜びが、俺の心にグサグサと刺さる。罪悪感がもう、半端ない。
今更ながらに後悔してきた。
けど、
「俺はたまにやってるし、結構上手いほうだから、絶対に勝つっ!」
この戦いには負けられない。
男には、負けられない戦いというものがある。それが、これだ。間違いなく、これだ!
「私だって、絶対に、負けないからね……!」
彼女が腕を曲げる仕草のあまりの可愛さに、少しクラっときてしまった。
そうして、勝負の幕は開けた。
勝負のルールは、大体こんな感じになった。
レースは全部で5レース。
コースは、全部おまかせ。
3レース、相手よりも順位が高かった方の勝ち。
CPUはつよいで150cc。
1レース目の結果は、俺の勝ちだった。
けど、圧勝というわけではない。
俺はときどきやってるから、1位になるのはまあ当然だ。
それはいい。というか、当たり前だろう。
問題は、2位に葵がいることだ。
しかも、俺に以外と食いついてきていた。
つまり、俺と葵は僅差だったわけだ。
……てか、久しぶりにやったにしては葵強くね?
てか、絶対にそれ嘘だろ!
いや、嘘だと信じたいっ……。
俺は、8年間ぐらい頑張ってここまで上手くなったのに、葵がここまで上手いとは、世の中とは理不尽なものだ。
たぶん、葵は嘘を吐いてないんだろうけど。
「どうしたの? はやく2レース目やろうよ~。私は久しぶりにやったんだから、次は手加減してほしいな?」
葵は俺をからかうように、笑いながらそんなことを言ってくる。
いやいやいや、手加減したら俺が負けるんだよ。勝てる要素がなくなるんだよ。勝てなくなるんだよ。
と、そんなことを思いながら、俺は2レース目を始めるのだった。
「うそ、だろ……?」
結果は俺の負けだった。
俺はその結果に少し絶望する。
葵に余裕のある勝ち方をされたから。
てか、最初のレースのとき、葵が手加減してたのを疑いたくなるレベルだ。それほどの差だった。
「悠くんってば、優しいね。本当に手加減してくれるなんて、思ってもなかったよ~。ありがとう」
それ、本気で言ってるのか? お前、絶対に
俺を
自分ではよくわからないが、たぶん今の俺の顔をみたら本気でやったのがわかるほどの悔しそうな顔をしてると思う。
まさか、俺の顔を見て……!
「もうっ! 一々なにか考えたりしてないで、次のレースをはやくやろうよ!」
「わかった……」
俺はなんともいえない気持ちでそう言うと、渋々3レース目を始めることにするのだった。この勝負、俺は負けるわけにはいかないのだから……。
3レース目は俺が負けた。
だが、4レース目は俺が勝ちをもぎ取った。
まあ、運だけで勝てたようなもんだったが。
最後の方で、葵が集中砲火にあったから。
さすがに、そこまでお膳立てされてたら、俺も負けるわけにはいかない。負けれない。
ここまでやってきて、俺はいろんな意味で、すでに後悔していた。
「悠くんっ! 次で、決着、だね。私、絶対に負けないからね!」
「俺だって、負けないからな」
あまりのゲームへの集中のせいで、二人の息は既に乱れてる。
そして、俺はそのせいで時間を気にすることを忘れてしまっていた。
「ヤバイヤバイ!」
「このまま……。このまま……」
俺はゲームに集中していた。
自分がどんなことを口にしているのかなんてわかってない。
今、葵は1位。俺は2位だ。
そろそろ、最終ラップに入ろうとしている。
差は僅差で、ドケドケこうらなんてもんが飛んでくれば、俺が勝つだろう。
そんな差しかない。
最終ラップ。これで、勝負の運命が決まる。だからこそ、今まで一番力を入れ、ゲームに臨むことにする。
「やったっ! 勝てたー!」
俺は負けたが、悔いは全く残ってなかった。
それだけ、いい勝負ができたと思ったから。
5レース目の結果は、僅差で俺の負け。
本当にギリギリだった。
そこで、俺は自分のいた場所がかなり移動していたことに、今さらのように気づいた。
葵との距離の近さに、思わずドキッとする。
俺がその状況に、少し唖然としていると、 一度、深く息を吐き出してから、葵は気の抜けたようなことを言った。
「悠くん本当に強かったから、負けちゃうかと思ったよ~。もう、手加減してよね」
葵のその気持ちもわかるような気がした。
実際、俺もそんな気持ちだ。
ハラハラ、ドキドキするいい勝負だったと思う。
そういえば、葵が選んだのは桃冠王女というキャラだった。
とても彼女に似合ってると思う。
部屋の色と同じ、ピンクを基調としたデザインの服を着たキャラだ。
俺が選んだのは、緑の配管工というキャラだ。
緑のとキャラの名前に入ってるからわかるかもだが、緑を基調としている。
だが、一番は緑の帽子を被ってるところだろうか?
てか、これだけ強いのに久しぶりにやるなんて言ってたのが、まさに信じがたいことだった。
「ねえ、悠くん。勝負をする前に私が言ったこと、ちゃんと覚えてる?」
葵が、イタズラをする前の子供のように、そんなことを言ってきた。
俺は、もちろんのように覚えている。
というのも、それが一番の目当てだったといっても過言ではない。
だから、俺はこう言った。
「ちゃんと覚えてるよ。それで、どんな命令をするんだ?」
「う~ん。そうだな~、ちょっと考えさせて?」
彼女はそう言うと、俺をベットに押し倒してきた。
そんな彼女の行動と、言葉が噛み合ってない状況に俺は面食らってしまった。
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