女の子の部屋でドキドキゲーム時間 3
えっと、葵さん? その、めちゃくちゃ怖いんですけど? その、なにかありました?
俺は、そう思わずにはいられなかった。
「悠くん? 隣にいるそのかわいい女の子、だれ?」
たしかに、見た目だけでの話なら、かわいいと俺も思う。
けど、俺はこいつの裏の? 顔を知ってるし、これは全然かわいくない。
というか、どちらかと言えばこいつは怖い。だって、空を飛んでるカラスを見てたら食べたくなったやつだぞ?
しかも、人肉も食べてみたいと言ってたし……。
て、それより、今は葵だった。
俺は、もう一度葵を見てみると、「どうしたの? 早く教えて?」とでも言いたげに、こっちを優しくほほ笑みながら見ている。
その笑みが怖いんだよ! なんで、そんな不機嫌なんだよ!
「えっと、その──」
少し声を震わせながら説明しようとすると、そこで赤里が俺の言葉を引き継ぐように話しだした。
「私は、赤里鈴音といいます」
おい、猫かぶってんじゃねー!
と、言おうとしてるのにでも気づいたのか、俺の方を見て、「なにも言わないで?」と、目で物語っていた。
なぜだろうか? 俺の周りには、勘の鋭いやつが多すぎやしないだろうか?
「えっと、悠くんとはどういう関係なの?」
「ただの知り合いです」
「本当に? それじゃ、なんでそんなに仲がよさそうなの?」
「きっと、それは気のせいです。私は、こんな人となんて、一緒に居たいと思いませんので」
「悠くん、本当?」
ただの知り合いかと聞かれたら、絶対違う。
いや、知り合いがあんなことをするか? するわけないだろ!
それなのに、俺の存在は知り合い扱いですか。
いや、別にいいけどな?
それに、赤里は「早く同意してくれる?」と目で俺に訴えかけてきている。
ここで同意しておかないと、どっちからも後でなにをされるかわからないからな。
「あ、ああ。こいつはただの知り合いだよ……」
「ふ~ん。…………まあ、悠くんがそういうんだったら、信じるけどさ。それで、私も下校にご一緒させてもらっていい?」
俺としては問題はない。
というよりも、葵が居てくれた方が、俺としては心強い。
それに、それなら俺と赤里を見て、彼氏彼女だと思うやつもいないだろう。
ただ、その考えが甘かったのだと、俺は次の日知ることになるのだが、それはまた別の話だ。
とりあえず、一応、赤里に確認しようと思って彼女を見る。
「私は別にいいですよ? 私は、あなたとも仲良なりたいですから」
猫をかぶってる赤里がそう言った。
ヤバい、ちょっとずつこの赤里に対して、気持ち悪さを覚えてきたんだが。
「悠くんもいい?」
おい。その頼み方は反則だろ。
そんな上目遣いで頼まれたら、断われる男なんているわけないだろ。まあ、もともと断るつもりもなかったんだけどな。
葵の、あまりにも破壊力のある頼み方に、俺はこう言うしかなかった。
「もちろん」
「悠、ちょっと……」
赤里はそう言うと、俺のポケットを漁りだした。
そして、何かを取ると、「ありがとう」とそう言って離れた。
ちなみに、その何かとは、高性能な集音器だ。値段? もちろん高かった。
なんでそんなものを買ったのか。
それは、俺がボロを出しそうになった瞬間に、電話を掛けるためだと赤里が言っていた。
つまり、あのとき掛かってきた電話は、偶然じゃなかったわけだ。
と、そんなことを考えていると、この場にいるもう一人の美少女が、冷え切った声で、
「二人とも、仲いいんだね……」
そう言った。
なんでだろう。相変わらず笑顔なのに、その笑顔がとても怖い。
というか、葵のその言葉が別の意味の言葉にしか聞こえないんですが……。
「あら、葵さんはご冗談がお上手ですね。私と柊さんはただの知り合いですから」
見える。俺には見える。この二人が今、バチバチなのが見えるっ!
てか、なんでこんな空気になるんだよ。
どこにこんな空気なる要素があったんだよ。
お前らただ自己紹介しただけだろ。
どうして俺がこんな目に合わなきゃいけないんだよ。
今は普通の下校風景なはずだろ。楽しい楽しい、下校の時間なんじゃないのか。なのに、なんでこんなことに……。
と、ふと俺は葵の方を見てしまった。
そこには、あり得ないぐらいニコニコで、笑顔な葵がこっちを見ていた。
てか、怒ってる? 感情と顔が真逆な気がするんですがっ!?
「あっ、そうだったっ! 実は悠くんに話があったんだった」
なんでだろう。めちゃくちゃ嫌な予感がするんだけど……。
だから、俺は恐る恐る訊いた。
「……えっと、なに?」
「その、今から私の家に遊び来ない? もちろん、赤里さんもどうですか?」
なんか、赤里のところは渋々といった感じだったような気がしなくもないが、たぶん気のせいだろう。気のせいだと信じたい。いや、気のせいだ。
だから葵、そんな目で赤里を見ないでくれ。絶対に来るなよという視線で。
「えっと、俺は別に構わないよ? このあとは、特に用事があるわけでもないし、せっかくだから」
「あの、誘って頂けたのはとても嬉しいのですが、すいません。私は用事があるので……」
どうやら、赤里は来ないようだった。
本当に用事があるのかということは、ちょっと気になるところではあるが、来たら来たらで大変なことになりそうだから、それでよかったのかもしれない。
と、俺は緊張が解けたからなのか、それとも空気が変わったからなのか、「はぁ……」と、思わず大きなため息を吐いてしまった。
ピロリン//
そこで、俺の携帯が鳴る。
俺は、少しバツの悪い気持ちになりながらも、誰からの連絡か確認する。
その連絡は、赤里からのものだった。
いや、すぐそこにいるんだから、直接話せばいいだろ。なんで、わざわざ連絡してきたんだよ。
と、そんなことを思いながらも、連絡の内容を確認してみる。
そこには、『言ったら……わかってるわよね?』というものだった。
いや、こわっ! 普通にこれは、怖すぎるんだけど。軽くホラーだよ!
てか、俺への信用はゼロかよ。
いや、さっき響鬼に言おうとしてた俺が言えることではないけどもさ。
でもさ、少しぐらい信用してくれてもよくないか? 俺だって、約束ぐらい守れるっての。
いや、まあ言いそうになることはあるけども。
と、そこで、赤里が俺の方を見ていることに気づいた。
だから、コクコクと俺は頷いた。
赤里は満足したのか、視線をもとに戻した。
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