かわいい女の子との食事は好きですか?
女の子と食事はデートというのだろうか?
「おやおや、君にモテ期到来かな?」
「違うわ。て、お前、いたのか……」
こいつが俺の中学からの友人の
俺と違ってイケメンで天才。そのうえ運動神経も抜群ときてる。
まあ、俺の友人だということはオタクということなんだけどな。
そもそも、オタクじゃかったら、こんなやつとつるまない。
響鬼を輝かせるだけになるからな。
「それは、影が薄いっていう比喩表現だね。僕も傷つく心を持ってるんだよ、悠」
こいつに、人の心があったことには驚きだ。
そもそも、こいつが俺以外の人間に心を開いてるのを見たことがない。
「ほら、君がなかなか来ないから、迎えに来たんだよ。ところで、さっきの子とはどういう関係なんだい?」
「朝ちょっとな。いろいろあったんだよ」
「へぇー。まあ、相談とかあればのるよ。友人のよしみということでね」
「いや、だからマジでそんなんじゃないっての」
「いつでもいいよ」
グッジョブ! と右手の親指を突き立てて、こっちを笑顔で見ながらそう言ってきた。
てっ、人の話を聞けや。
「そんじゃ、まあ、そんときはな……」
とりあえず、折れておく。そこで、話を一度終わらせるためだけに。
まあ、そんなことは一生こないけどな。
天地がひっくり返ってもあり得ない話だけな!
「うんうん。頼まれたよ。それで、もう帰る準備はできているのかい?」
「ああ、もちろん。できてるよ。それじゃ、帰るか」
そうして、響鬼と一緒に、学校を後にした。
俺は今、電車に揺られている。隣には響鬼もいる。
響鬼とは同じ電車なのだが、違う駅で降りる。だから、学校に行くときは別々で、帰るときは一緒にということにした。
「響鬼はイケメンなんだし、友達の一人や二人できたんじゃないか?」
俺は学校初日にふさわしい質問をする。
それに、響鬼は今も割と周りがざわつくほどのイケメンなのだ。内容は大体、隣のやつがいらないとかそんな感じ。うっせー!
「君は彼女ができたようだけどね。僕の方は全然だよ。それに、僕のことをイケメンだって褒めてくれるのは君ぐらいからだからね。けどやっぱり、君と違うクラスになっちゃったのは残念だよ」
「いや、あの子は彼女じゃねぇっての。まあ、後者の方は残念だけどな」
それと、たぶんだけど、響鬼のことを気にかけてるクラスの女子は多いだろうし、イケメンだとは思ってるのではないだろうか。
そして、男子が言ってこないのは嫉妬してるからだと思うぞ。
このことは、絶対に響鬼に言うつもりはないが。
ちなみに、俺も響鬼嫉妬組の仲間だ。
しかし、中学時代に響鬼が告白されるのを見たことないし、そんな話を聞いたこともない。
「悠、聞いてる……?」
「うん……? ああ、ちゃんと聞いてるよ」
やばい、全然聞いてなかった。
けど、まあ、平気だろう。どうせ大したことじゃないだろうし。
てか、大した話を電車の中じゃしないだろう。
「それならいいけど。それで、彼女のことのんだけど──」
「いやなんの話だよ!」
大したことだったわ。
俺が予想していた3倍もの大したことだったわ。
まさか、響鬼に彼女が居ただなんて。
どんな人なのか気になる。きっと、とてもかわいい、まるで芸能人のような人なのだと思う。
ぜひ、友達のよしみとして、紹介してもらいたい。
「やっぱり全然聞いてなかったんだね。それで、君が今朝会ったていう赤い髪の、君の彼女がいたでしょ?」
「彼女じゃないっての」
名前は確か、
せっかく、かわいい子に会えるかもと期待していたのだが。
もちろん、俺の彼女なわけがない。そもそも、俺には
「その子、とっても可愛かったし、もしかしてああいう子が悠の好みなのかなぁ~、と思って話してたんだけど、実際どうなんだい?」
確かに、とてつもなく可愛くて、清楚な見た目をしていて、背も小さく、胸も大きくない。一見しただけでは、小学生にも見える彼女だが……。
「いや、別に好みじゃねぇーよ!」
「あっ、でも金髪碧眼ロリじゃないから悠の好みじゃなかったね。ごめん、今ちょっと忘れてたよ。あっ、それと、お嬢様もだったね」
「忘れてたもなにも、俺はロリコンじゃないっ!」
金髪碧眼は当たってるし、お嬢様もあたってるけど、ロリが余計だよ! ロリが!
とりあえず、響鬼には俺がロリコンではないということを早口でまくし立てながら説明した。いや、力説した。
ちなみに、響鬼は降りる駅に到着すると、逃げるように行ってしまった。一体なぜ?
家に帰った俺は昼ごはんを食べ終えると、午後をどうしようかなと考えていた。
入学式は午前中だったため、午後は特段やることが、まだない。
普段なら、ここでソシャゲでもしだすところだが、今はそういうわけにもいかない。
それは、入学式後に謝ってきた女の子にある。今日、その子と会う可能性がある。
だから、少し考えていた。
普段着に着替えるんだとしたら、今日誘われたときに、もう一度着替えるのが面倒だ。
そう思いながらも、結局は普段着に着替えて、ベッドに寝転がる。
すると、スマホがピロンッ、という軽快な音を立てるとともに、連絡がきた。
タイミング悪いなと思いながらも確認してみる。案の定、
『ファミレスで奢るということなのですが、明日の放課後はいかがでしょうか?』
明日の放課後か。
もちろん俺に予定などあるわけがない。
だから、普通に承諾する。
さて、どうするか。時計を見ると、時刻はまだ昼下り。ソシャゲでもしようかと思ったが、やめる。
代わりに、絵を描くことにした。
丁度、一週間ほど前から描いている絵が、そろそろ完成しそうなのだ。
タブレットを起ち上げ、保存されてる絵を開く。
数時間後、絵を描き終えた。
かなりの出来のよさに、自分で描いた絵なのにも関わらず、陶酔する。
一段落ついたことによって、目の疲れに気づく。
まだ、夜ごはんまでに時間があるわけだし、と思いベッドに寝転がる。
少しだけ目を瞑るつもりで、目を閉じた。
「お兄ちゃん! 夜ごはんだよ?」
「夜……? 朝じゃなくて?」
ドアを開けっ放しにしてたのか、それともノックもせずに部屋に入ってきたのか、どちらにせよ、朝のときの光景と状況が被る。
「はぁ、また変な時間に寝てたの? だらしなさすぎだからね、お兄ちゃん。とにかく、夜ごはんできてるから早く食べて」
どうやら俺は、また気づかぬうちに寝てしまったらしい。
妹は一度立ち止まって振り返ると、俺の顔を見ながらこう言った。
「そうそう、あれ。電池の無駄だからやめて。それと、キモい」
妹が指差したのは、タブレットだった。
そこには、寝る前に描き上げた絵が表示されている。
ああ、うん。キモいよな。けどな、健全な男子高校生のハートはやわなんだぞ! そういうのは思ってるだけにして、心にしまっておいてくれよ。
妹が居た場所を見つめながら、心の中で抗議だけしておく。
そして、とりあえずタブレットの電源を落とし、食卓へ向かった。
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