第21話
やることがたくさんあるのにずっとイライラしているわけにもいかない。とりあえず冷蔵庫にある刺身の柵を切って、さっさと盛り付けてしまおうと思った。どんな時でも今できることをやるしかない。愚痴るよりも少し先の未来の自分のためにやるべき仕事を手早く片付けていくことが一番だ。自分を守るのも助けるのも所詮は自分しかできないのだから。
ピンポーン
まさかこんな時間にもう親類の誰かが来たのかと、インターホンの音に心臓が大きく跳ねた。慌ててリビングにある画面付きのドアホンで応答してみると、そこには別居している嫁が立っていた。
あの子・・・。
もともと陰気で嫌いなタイプの女だった。息子がどうしてもというから仕方なく結婚を許しただけで、私は未だにあの嫁を受け入れられていない。今日の集まりに早く来ても遅く来ても怒鳴りつけてやりたくなる衝動をかき立てるようなあの子が、いつもに増して暗い顔をして画面越しの私をじっと見つめている。
一人で来たのか。息子が一緒なら笑顔を作って迎え入れることができるけれど、あの子のためだけに作る笑顔などはない。私はドアホンを確認しただけで何も話さず玄関に向かった。
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