第13話

 詫びなければならない。愛されなかった人間が、愛されていた人間の人生を強制的に終わらせ、ただの肉にしてしまったことを。


 義家族から愛されていた夫は、今日の親戚の集まりに行けなくなってしまった。いや、私が行けなくしてしまったのだ。そう考えるとやっと申し訳ないと思えるようになってきた。


 夫と会えることを楽しみにしていた人々に、夫と二度と会えなくさせてしまったお詫びのしるしを贈りたいと思った。贈り物は何がいいかと考えながらふらりと立ち上がり、真っ白い壁から離れて夫の側に行った。血にまみれた夫との距離を考えず適当にぺたりと床に座ったらワンピースの裾を少しだけ赤黒い色に染めてしまった。


 なんて汚い色・・・。善人の癖に、私よりも愛されていたくせに、こんなに汚い液体を流すなんて。でもこの液体こそが彼なのだ。でんと倒れている肉体には愛情が詰まり、流れ出た血液には家族の絆と歴史が詰まっているのだ。

 

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