第5話

 「子供はいないけど、仕事も家事も頑張ってるもん!子供ができないのはしかたないよ」

 

 何度も言葉を詰まらせながら必死に言葉を返した。


 「私だって子供は欲しいよ!でも頑張ってもできないものはしょうがないでしょう?」


 「俺に恥をかかせてるんだよ、お前は!この年齢になっても子どもを持てていないなんて情けないだろ?なんでそんなこともわかんないんだよ、馬鹿っ!!」


 倒れてしまいそうだった。


 ずっと前からなかなか妊娠しないことに関して、夫や親戚たちからチクチクと嫌味を言われていた。辛かったがひたすら耐えていた。それは結婚をしたら子供を生すことが女の当然の務めだと思っていたから。子を産むことで私たちは本当の夫婦になれるのだと憧れていたから。だから子供ができなければ嫌味の一つや二つ言われることは仕方がないと納得していた。


 だが今気づいた。私は納得していたわけではなかった。諦めていたのだ。まわりから言われる嫌味も、子どもができない自分の体も、全て自分が原因なのだと考えていた。そして現状から逃れられるわけがないと諦めて、地獄に身を置きながらずっと鬼たちに心を焼かれ続けていたのだ。


 

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