第20話
机を広間に移動させておいてと頼んでいたのに夫はやってくれていない。
早い子は夕方前には家に集まってくるというのになぜわからないのか。何に関しても早め早めに行動したいせっかちな私と、のんびり構えてぎりぎりにしか行動しない夫との間にはいつも嫌な差が出ている。
小さな苛立ちは昔から積み重ねられている。離婚を考えるまでもないような些細な苛立ちの積み重ねは、二人を別つことは無いけれど、胃がじくじくと痛くなるようなストレスを生み出す。
結婚は忍耐だと何人もの人に言われてきた。耐えた先に得られるものがあるなら忍耐も意味を持つのだろうが、結婚して三十年以上経って得られたものは諦めの感情と余生への失意だけだ。
期待をせず、夫の緩慢を許し続けてきた私が悪いだろうか。だが何かと立場の弱い嫁という存在が、夫を許すこと以外何ができたというのだろう・・・。結婚前に知りたかったことは耐え忍ぶことの大切さよりも、長く共に暮らしていても夫婦には永遠に解り合えないことがいくつもあるということだった。ぼやいても詮無いことなのに、この歳になってもまだ私は割り切れずにいる。
そしてまた許し諦める。今日も新婚当初と変わらない弱さを飲み込んで妻という役割を生きるのだ。
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