第19話
部屋の明かりをテラテラ反射させては光る銀色のボウルに切り落とした肉を入れていく。自分の体から離して置いていても不穏な悪臭が鼻を突いた。料理酒や香辛料でこの臭いを消すことはできるのだろうか。
自分が食べることのない料理に気を使う私は何て良い嫁なのだろう。その良さに気付くことなく死んでいった夫の憐れなこと・・・。
流れ落ちてくる汗を拭いながら私の言葉をいつも聞き入れなかった夫の耳に刃を沿わせて思う。聞くことを拒否した耳に何の存在意義があるというのだろう。こんなものはただのアクセサリーだ。神的な存在がみんなと平等に付けただけの無意味で忌々しい飾りでしかない。
指と下半身の肉を抉られた夫は腐血の海の中で馬鹿みたいに死んでいる。私にとんでもないことをさせているというのに死んだ後まで能天気で自分勝手だ。轟々と燃える心のままに夫の右耳をつまんでお仕置きをするかのように横へグイと引っ張る。ラストスパートをかけるように、刃を耳の付け根にグッと押し付けて「クソ野郎!!」と怒鳴りながら一思いに千切り取ってやった。
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