第18話
ぷつっと皮膚に刃を差し込む感覚が気持ちいい。
肉はかなりの量が取れた。手頃なビニールシートが家の中にはなかったため、肉を取る部分の下にラップを敷いて新聞紙に溢れる血液を染み込ませながら夫の体から肉を切り取っていった。
最初に唐揚げ用の指を切断した。文化包丁では骨が邪魔をしてなかなか切り落とせなかったから、工具箱の中から鑿とトンカチを持ち出してそれを使った。鑿を指の付け根に沿わせて狙い、その上から思い切りトンカチを振り下ろした。力が入りすぎたからか、切断した瞬間に手から切り離された指が血をまき散らしながら宙を舞った。なんともシュールな光景に笑ってしまった。
一番最初に取り掛かった左手の小指を切り落とすときは緊張して手が震えて何度も失敗した。小指は傷だらけで、刃が何度も当った部分はミンチ肉のようになってしまった。しかし左手の小指、薬指、中指・・・と、回数をこなしていくと力加減や刃を落とすポイントがわかってきて、右手の指に取り掛かる頃には一撃で落とせるようになっていた。
料理でもなくDIYでもない、不思議な名もなき作業を私は黙々と続けた。
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