夫、贈られる

千秋静

第1話

 鍋の中では煮込み終えた肉塊がスープと共にほんのり湯気を上げて浮かんでいる。


 義母から連絡が来たのは昨日の夕方のことだった。集まりの時間の変更か何かかと思って電話に出てみると、明日の食事会には一家族一品手作りの料理を持ち寄るようにとの連絡であった。


 不意打ちの命令に、無言で電話を切ってやりたい衝動に駆られたが、後々面倒なことになりそうだったから仕方なく話を聞いてやった。いつでもこちらの都合などお構いなしな厚かましい義母がいかにも言いだしそうなことだと思いながら、三十分にも及ぶ不快な長電話に付き合った。


 お盆の食事会は以前から決まっていたことだが、おかずを持ち寄ってどうこうという部分は浅はかな義母の思いつきであった。伝えるのが集まりの前日であろうと、言えばまわりは何でも従い、逆らうことなど絶対にしないと思い込んでいるのだ。


 私は義母が大嫌いだった。


 きっと向こうだって私のことが好きではないはずなのに、私を遠くに追いやろうとはしない。理由は手の届く所に私を置いて思い通りに使い、虐めたい時に虐めるためだ。


 そういう意地が悪く、人を傷つけることに躊躇しない義母が嫌いでとても恐ろしかった。


 

 

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