第10話
夫がただの肉と化してから数時間が経過した。リビングには血の匂いが充満し、変色して黒くなった血が床を染め、壁にまで散っている。
深夜、私は血の付いていない真っ白な壁の方を向きながらコーヒーを飲んでいた。汚れのない真っ白な壁を見ていると、いつもと変わらない夜を生きているように思えてくる。
いつもの部屋、いつものコーヒー、いつもの時計のカチコチ音。血の海で蕩けそこなったぼんくらな夫さえいなければ、こんなに快適な時間はないはずだった。しかし外からサイレンを鳴らしたパトカーが走り去っていく音がかすかに聞こえてくると、グッと喉が閉じた。
現実を生きているようで、もう現実には戻ることができない異常な世界に来てしまった。真っ白な壁を見て夫の頭を砕いたことを忘れようとしても後ろには地獄絵図が広がっているし、私はもう今までの私ではなくなっていた。
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