第30話

呪った本人はぎゃあすか騒いで楽しそうだし、まだまだ呪いが解けないのは分かっている。

だが妻が三人もいて、子供も同じ時期に産まれたとあって、カデフェイルはご近所さんどころか王都中に最低男のレッテルを貼られているのだ。

違うんだとどれだけ説明しても誰も理解してくれない。


なんせ三人の妻もそこは上手くはぐらかすのでますます悪役に仕立てあげられている。冤罪だと声高に叫んでも誰も聞いてくれない。


ならばせめて呪いを解いて、できることを証明したい。

その極上の肌を堪能したこともないのに、罪を積み上げられても納得できるわけないだろう。罪をきちんと確定したい。体感したい。妄想でなく実地でお願いしたい。三人の妻の体を暴きたい。


そうして男の欲求をぶつけて証明するのだ。夫でも獣に変わるのだということを!

家事ばかり、育児ばかり、エロ小説書くばかりではないということを!!


「そんなの姉さん抱けば一発で解決するぞ?」

「は? エロ小説読み終わって満足するまでは呪われるって言われたんだぞ?」

「姉さんの嫌がらせの呪いだからな。そりゃ自分とはしないのによその女とするのは神だって面白くはないさ。だから姉さんが満足すりゃあ簡単に解ける」

「俺の長年の苦労はなんだったんだ…」


苦節二年…散々、右手にお世話になることもなかったし、エロ小説を量産しなくても済んだということだろう。


「さくっとやってくれば? なんなら、お邪魔虫連れて退散してもいいぞ」

「残念ながら、お前の姉神様は煩悩の対象外だ」

「性欲の神の前で、面白いな。どんな神も姉さんの前じゃあ抱きたいって襲ってくるのに」

「なんだろうな、人外レベルに綺麗すぎて駄目なんだろうか」

「ぶふっ、褒めてるんだよな…? いや、それを俺に聞かれてもな…俺も姉さん襲ったほうだし…」

「お前、剣神だろうが! もっとこう高尚な精神を大切にしろ。世の中の剣を持つ奴がなんだか居たたまれなくなるだろ!」

「いい女がいりゃあ、まあお願いするよね」

「絶対娘には近づくなよ」

「あはは、わかってるって」


軽快な笑い声をあげる男など、信用できるものではない。娘は自分が守ろうと心に誓う。


「まあ、そうなるとしばらくはその呪われた体でいるしかないな。姉さんのいう通り、エロ小説書いて、満足させるしかないじゃないか?」


無情な男神の言葉に、呪いの継続が決定した。

今日も明日も明後日も、カデフェイルの呪いは解かれることはないらしい。

今月も来月も再来月も、嫁を抱くことは叶わないのか。

今年、来年、再来年と子供はどんどん大きくなるというのに…。


絶望に近い気持ちを抱えて、カデフェイルは深々と息を吐いた。


女神のエロ小説読書係の受難はまだまだ続く―――。

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