第23話
「ご機嫌はどうかな! うむ、じぃじぃにも笑いかけてくれるのぅ」
「本当に可愛いなぁ、どれ伯父さんがあやしてやるからな」
「お兄様もお爺様も私の子を返してください!」
子供が産まれたとの報せを受け取り、恐る恐る神殿に向かえば、案内係の神官から物凄い批難の視線を向けられた。
進めども進めども向けられる視線は変わることがない。
一体何が起こっているのか恐々としながら廊下を進んで、いつもの部屋ではなく、2階の部屋の扉を開けた瞬間、飛び込んできた光景に絶句した。
表情筋が溶けたような猊下と大主教、怒る聖女がいた。威厳もへったくれもない様子に、神官たちの無言の批難の視線を理解した。赤子が産まれてからずっとこの状態だったのだろう。
自分が信仰しているトップがとち狂えば、下は原因を恨むものだ。
だが、これは自分のせいだろうか。
関係なくはないが、直接的な関係はなくないか?
狂乱の三つ巴の中心にいるのはソリュドよりもやや小さいが、色彩そっくりな赤子だった。
本当に別の腹から産まれたのかと疑うほどにそっくりだ。むしろ双子の小さいほうと言われたほうがしっくりくる。
黒髪に金緑色の瞳は全く自分と同じだ。
カデフェイルの湖面に黄金が映りこんだかのような瞳の色は珍しい。家族の中でも自分しか持ちえない色だった。何代か前の先祖に同じような瞳を持つ者がいたらしいが、実際に見た者はいないほど古い話だ。
それが目の前にいて、大人たちの腕の中できょとんと眼を瞬いている。
「あら、カーデ様! いらっしゃいませ」
入り口に突っ立てたカデフェイルに気が付いて、デイトリンが朗らかに声をかけてきた。
「ええ、と…聖女様、この度は無事なご出産おめでとうございます」
「いやだ、もう夫婦なのですからデイトリンとお呼びくださいな、旦那様。それよりも洗礼式をしたいのですけれど、二人が取り上げてしまって洗礼式用の服に着替えさせられないのです、取り戻してください!」
情報量が多すぎてついていけない。
もうどこから突っ込めばいいのか、カデフェイルにはわからなかった。
夫婦になった覚えはないし、今日が洗礼式だということも初めて知った。そしてあのドロドロの攻防戦に自分が参戦するのだけは避けたい。
とにかく初志貫徹が大事だ。
気合を込めて、デイトリンを見つめた。
「あの、俺への処罰はどうなりそうですか?」
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