第2話
「ほら、人間て家族大好きでしょ? 仕事も進めばアタシももっとたくさん興奮できるし。アナタの新作をヤキモキせずに待たなくてすむでしょ。あ、安心して、アナタそっくりの男の子がだから」
安心?
何を安心すればいいのか、安心の意味をこの女神は知っているのか?
そもそも、新作を読みたいからって何をしたって?
男は大混乱する自分の頭を一度ばしんと叩くと、女を見つめた。
「とにかく、一度整理させてくれ。俺はまったく身に覚えがないんだが、お前が俺の子供を産むのか?」
「神は残念ながら人間の子供は産めないのよね。だから、代理母を適当に見繕ったわよ。んもう、なんのためにさっきからアナタの理想の女性の話をしてると思ってるの?」
存外に頭が悪いと言われたようで、男はかちんときた。
だが、それも一つ深呼吸して静める。
ひとまずは、事情の把握の方が先だ。
代理母ってのはなんだ。
「代理母?」
「アタシの分身体よ。神は自分の分身体を人間として作るの。昔に作った分身体の血脈がいて、うまく混ざって先祖返りした娘がいたのよ。アタシに近いからその子の体なら好き勝手できるわ。その子の体にアナタの種を植え付けたらいい感じに受精したの。もうすぐ臨月よ」
「はあ? 俺の種ってどうやって?」
「んふふ、アナタが時折自分で処理してるでしょ、それを貰って処女を孕ませることなんて神には簡単だわ」
得意げに笑う女が邪悪な何かにしか思えない。いや、そういえば邪神だった。だからこそ創造神からこんな場所に隔離されているのだから。
「実をいうと、アナタのお話に興奮しすぎて、たまらくなっちゃって。体は熱くなるのに少しも宥めてくれないし。いろいろアナタの本のとおりにアナタとアレコレしてる自分を想像しながら、アナタの種も盗んでいきまくってたんだけど。熱が籠って熱くて熱くておかしくなって神力が暴走しちゃったのよね。それがワタシと近い彼女の体に飛んじゃったみたいで、いつの間にか妊娠しちゃってたのよ。ほんと、びっくり。そんなこともあるのね。でも全然、アナタが相手してくれないからよ。だから、責任とってちゃんと育ててね」
無駄な神力の使い方をしてんじゃねええええ!
しかも人の子種を盗んで何をしていたと?
自分が犯した事故みたいなものをなぜカデフェイルのためだと恩着せがましく偉そうに話しているのか。
さらには、処女に種を植え付けて孕ませただと。相手の女も随分と驚いたことだろう。身に覚えがないのに、腹ばかり大きくなるだなんて。
顔なじみでないことを祈るばかりだ。
「どこのどんな女だよ、その可哀そうな被害者は…」
「ええと、長い名前で忘れちゃったわね、確かミアって娘よ」
「どこに住んでるんだ?」
「ええーと、国の名前ってすぐに変わっちゃうから覚えられなくて。アナタが住んでるところから少し離れた場所にいるから、子供を産んでから会いにくるまでには少し時間がかかるかもしれないわね」
名前がミアってことくらいしかわからない。
だが、知らない方がいいのかもしれない。下手に関わるのもよくないのでは。
むしろこのまま無関係で過ごしたい。
「いや、別に会いに来なくていいから。無事に生きてるんならそのままそっとしてやってくれ」
「え、でも放置したら、きっと彼女殺されちゃうわよ?」
「は?」
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