第13話

「ほうら、みなさい。アナタの子じゃないの!」

「うっさい、どういうことか説明してもらおうか?」


鬼の首をとったかのように高笑いを始める邪神を黙らせて、半泣きになっている女へと視線を戻す。

あちこち視線をさ迷わせた女は、どもりながら説明を始める。


「ですから、ええと。私、あの邪で悪なる存在を監視するために度々ここに来ていまして。その時に本当にたまたま貴方の話を耳にしたのですが、あのお話の数々に感動しまして…なんと尊い愛のカタチかと心酔したんです。とくにあの月夜のお話が素敵でしたわ」


瞳を輝かせて女が熱く語る。

まるで聖女のような姿にカデフェイルは少し引いた。


月夜の話といえば、傲慢な令嬢が執事たる下僕を連れて夜の小舟に乗って海へと出航するというくだりだろうか。そのまま巨大イカの足に絡まれて3Pプレイになるという…。

アイタルトからは斬新すぎると怒られ、ファンから賛否両論の意見をいただいたのだが。

そういえば月夜の話を聖女も口にしていた。

聖女で未成年だというのに、とんだ性癖だ。彼女の将来がうっかり心配になるほどだ。


「つまり、アンタは―――」

「申し遅れました。私、創造主代理をしております、ヴェルティと申します。この度は私の分身体の聖女が、そのご迷惑をかけたようで…」

「謝罪はいらないです…」


創造主代理というが、聖女は目の前の女神の分身体ということで。

邪神と同じく分身体が孕んだということはまた神力の暴走とかそういう現象なのだろう。


「あまりに素敵なお話だったので、毎日繰り返し妄想していただけなんです、本当です。決してこの邪悪なる者のような破廉恥な行いはしていない…はずなんですけど、ある日なぜか彼女が子供ができたと騒ぎ出しまして…私もどうしたらいいのかわからなくて…でも確かに子供がいるんです。それも貴方そっくりの男の子が……」

「はあ、想像妊娠とかじゃないのか?!」

「私も不思議なのですが、胎動も感じますし、なんなら神力も感じますから。とにかくあと三月もすれば、赤子が産まれます」

「なんてことだ…」


弁解の余地のない、八つ裂き決定の瞬間だった。


「未成年を孕ませるなんて…俺は犯罪者になってしまった…」

「未成年?20歳も100歳も対して違いはないわよ」

「そうですよ、子が産める体である以上は立派な女ですから」

「超越者たるアンタたちに人間の倫理観は求めてないです」


当然といったように超然とした理論を語られてもなんの慰めにもならない。

20歳と100歳が同じわけないだろう?

片方は生きててもう片方の大半は死んでいるのだから。

そもそも成人は18歳だ。

2歳もサバを読むなと言いたいが、神にとっては数年単位のずれはないものになっているのだろう。


「とにかく。今後も俺の書いた話が読みたければ、もちろん協力してくれるよな」


こんな神たちの馬鹿な仕業で人生を終わらせるつもりは全くないのだから。

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