第7話 タスクフォース
他の潜空艦と入れ替わりでドッキングベイに接続され、
早速ブリーフィングルームに入ると、他のチョークの人達が何人かいて、河邉少佐に話しかけている。僕のことも話題になっているようにみえる。
しばらくすると、一人の女性が僕に微笑みかける。
「あなたが山岸曹長ね。私は柏木チョークの班長をしている
「よろしくお願いします、柏木大尉」
「竜川中尉は可愛い後輩ができて幸せね」
竜川中尉がニコリと微笑む。
やがて、さらに他のチョークの人員も揃ってくる。その中には日本担当以外の人員もいるようで、韓国語や中国語、英語でのやりとりも聞こえ始める。
僕は今回初めて給付されたウォッチデバイスの翻訳サポート機能を起動する。英語でのブリーフィングを理解するために急ぎ渡されたものだ。
僕が理解できないときに血圧変化や発汗でそれを感じ取って、最低限の翻訳をしてくれるものだ。幸い、親の方針で英会話教室には長く通っていたが、軍事用語まではわからないことが多い。それを補ってくれるものだ。
席がほぼ埋まったところで、全体ブリーフィングが始まる。今回の任務部隊全体の現場指揮は河邉少佐が行うそうで、彼女からの説明が長い。
概要としては、先行部隊がBSLB格納庫を攻撃、敵の意識が格納庫防衛に移ったのを機に救出部隊ができるだけ
先行部隊の
そこに十五秒以内にロケットランチャーによる飽和攻撃をして、搭乗する前に壊滅させるのが一番重要になる。
僕と竜川中尉が参加する柏木チョーク(KGチョーク)はBSLB総勢七機で救出任務を担当する。その中でも特に、柏木大尉(KG-1)、竜川中尉(KG-6)、僕(KG-7)が敵陣最奥まで行って、要救出者を直接確認して回収する役割だ。
全体ブリーフィングの後は今回の
僕と竜川中尉は改めてKGチョークの元々のメンバーに紹介される。その後は、チョーク毎にシミュレーションルームでの訓練をして、連携を確認した。
「敵の日本でのBSLB総本山への攻撃だからね。少しでも気を抜くと命に関わるよ。作戦決行日まで、何度も練習するからね」
柏木大尉はそういうと、僕の学校のスケジュールを確認した。僕に合わせた作戦スケジュールを作ってくれるという。
「お手数おかけします。よろしくお願いします」
「いいの。あなたは過去人採用のモデルケースになっているからね。あなたの恋人の件も、うちのメディア対応の要になりつつあるの。絶対にあなたも、あなたの恋人も守るから」
「ありがとうございます」
僕は素直にお礼を言いつつ、メディア対応の要という言葉を
その様子を見ていた竜川中尉が、補足をしてくれる。
「ヒロ……、えー、山岸曹長。君は未来のメディアでは勇気ある第一号の過去人戦士で、その恋人も未来政府の残虐な政策の犠牲者という立場になってるらしいよ。うちのプロパガンダに利用するようで悪いけど、それだけにこうやって優先順位が高い作戦になったんだ。許して欲しい」
僕はそういうカラクリだったかと思いつつ、問題ないと微笑んだ。お陰で吾妻を救けることができるのだから、文句はいえない。
しかし一方では、したたかに利用されたものだという感情も湧き起こるのだった。
◆
一週間ほどの間、連携シミュレーションの他に、他者臨時搭乗訓練というものも実施した。
フルグルに吾妻を乗せるための練習だったが、これが意外に酔うのだ。フルグルからの感覚フィードバックに、乗せた相手の思念が混ざることで、乗り物酔いによく似た症状となり、パフォーマンスが低下する。
柏木大尉や竜川中尉が練習代になってくれたが、すごく酔って何度も吐いた。僕の主観では、作戦の中で一番の山場はこの点のような気がするくらい、しんどい。
とはいえ、BSLB対BSLB同士の戦闘の中で吾妻をひとり生身で歩かせる訳にもいかないのだから仕方がない。僕の根性が試されるということだ。
作戦決行日の夜、僕は自分の両手で自分の顔を叩く。この日のために積み重ねた訓練量を思い、自分ならできると気分を盛り上げていく。
梅雨らしい雨がしっとり降る中、吾妻救出作戦は実行に移される。
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