第20話 増援
こちらの無反動砲の射程をわかっているようで、ギリギリの距離で一斉攻撃には移れない。
しかし、こちらは援軍を待っている状況のため、無理をしてまで早く交戦しようとは思っていない。
味方の潜空艦は、敵の潜空艦に対して多方面からのヒットアンドアウェイを何度も繰り返しており、未来からの援軍である大型潜空艦五隻と小型潜空艦四隻の攻撃が始まれば雌雄が決する見込みだ。
こちらも、桜田門と平川門に皇居防衛部隊のBSLBを集め、その周囲に陸自の戦車部隊が展開している。しかし、未来軍の戦車に対抗出来ないのが明らかなので、陸自戦車部隊には期待ができない。
遊撃部隊は皇居外苑の西寄りに待機しており、戦闘が始まったら桜田門方面の敵を
秋とはいえ、日差しが強くてフルグルの中も蒸し暑くなっている。僕は汗を流しつつ、間もなく始まる戦闘に備えて目を閉じ、息を整える。
何度か深呼吸を繰り返し、目を開けたとき、ちょうど号令が聞こえる。
「KG-1より各機、桜田門外へ移動」
「了解」
僕達遊撃部隊は、城内に
「城内からの支援がある距離を忘れるな。引きつけろ」
「了解」
「散開!」
KGチョークの班員たちは、それぞれに選んだビルを
僕も、手頃なビルに隠れてから、左手にナイフを持つ。
KGチョークの全員が遮蔽物に隠れたところで、城内からの砲撃支援がなされる。相手の反撃も含め、無数の徹甲弾が僕達のすぐ傍を行き交う。
数分続いた城内と敵との砲撃戦が落ち着いた様子を見計らい、僕は右手だけをビルの陰から出す。
右手カメラの映像で、前進してくる相手を二機見つける。相手もこちらが待ち構えているのに気づいたようだ。
僕はビルの陰から相手の目の前まで、二歩で距離を詰める。
相手が発砲するより早く、ナイフで首筋を切り裂く。大量の出血と共に一機目が倒れきる前に、状況に対応しきれていない二機目の頭部を撃ち抜く。
そこで一度後退して、またビルを遮蔽物にして隠れる。
レーダーによると、新手が三機近づいてくる。速度が遅いので、フルグルに警戒しているのかもしれない。
タイミングを見て飛び出し、距離を詰めながら一機の頭を撃ち抜き、他の二機の射撃を盾で弾く。
ステップにフェイントを入れつつ、相手の後ろに回り込む。
左腕を一閃し、一機の首を切り裂くと、そのまま回転してその勢いでもう一機の首の骨を絶つ。
そこでまた高速移動で皇居方面に戻り、ビルの陰に隠れる。
レーダーで味方の様子を確認すると、一機が前に出すぎて、孤立しつつあった。
僕は地理データを確認しつつ、孤立しそうな味方の近くに向かう。味方を視認できるところまで来ると、レーダーで周囲の状況を確認する。
敵は囲みこむ動きを見せているため、まずは、そのうちの一隊、三機を倒すことにする。
フルグルの機動性をいかして一気に距離を詰めて、一機の首にナイフを突き立て、払う。同時にフルオートにしてあるライフルを他の二機に至近距離でぶち込む。
弾が幾つかあたり、ダメージを受けている相手を、ナイフで仕留めていく。細かなステップで敵を翻弄しつつ、連続で首を切り裂く。
味方の状況を見ると、二方向から三機ずつに接近され、挟まれている。フルグルを四足走行にしてすぐに駆けつける。
「無理はしないでください! 下がって」
「くっ、すまん」
フルグルで地面すれすれのジャンプをして、敵の後ろに回り込みつつ、一機の首元にライフルをぶち込んで首を飛ばす。
続いて左腕のナイフでもう一機の
仲間がやられたと認識したのか、狙いをこちらに変えた様子の二機の足下にライフルを連射して足を壊す。
そこでできた隙を生かして素早いステップで敵と味方の間に入り、またライフルを連射する。
立て続けに頭部を吹き飛ばして沈黙させる。
僕は味方をかばうように盾を構えて、ゆっくりと後退する。幸い、突っ込んでくる敵はいない。
「KG-1よりKG-12、平川門方面が苦戦している。そちらに急行して」
「KG-12了解」
僕は孤立しかけていた味方の後退を確認して、四足走行で皇居に向かう。
お堀を飛び越えて外苑に戻り、できるだけ直線的に皇居内を駆け抜ける。ネブラの
そこでは、一部の敵がすでに皇居内に侵入してきており、戦闘不能になった味方の姿も散見される。
僕はここまで走った勢いを利用して、味方と組み合っている敵BSLBの首筋にナイフを滑らせる。大量の血液が噴き出して、敵は倒れる。
レーダーと目視の両方で確認するに、すでに城内に突入している相手は六機、今にも突入しそうな敵は十機ほど、それに対して動ける味方は三機のようだ。
僕はフルグルの反応速度を信じて、次々に敵を襲う。フットワークで敵を撹乱し、ライフルの至近距離射撃、ナイフでの斬撃を最大限利用して、目に入った敵からひとつひとつ戦闘不能にしていく。
しかし敵が十機ほど、また城内に侵入し始める。今度は、ここを素通りして皇居中心部を狙うようだ。
「させるか!」
僕はすり抜けていこうとする敵をつかんで、頭部にライフルをぶち込む。一機を仕留めた隙に、他の敵は皇居中心部に向かっていく。
すぐに追うが、全てを捉えきれない上に、さらにまた新手が城内に突入しつつある。
「くそっ、手が足りない」
僕が苛立ちを覚えたそのとき、空の上に無数の影を見つける。
落下傘を広げた未来日本軍のBSLBだったが、それはどうやら味方のようだ。事前連絡にあった青のボディーカラーであり、真っ先に落下傘を外して飛び降りてきたBSLBは、間違いなく未来日本クーデター派の中心人物のひとり、矢ヶ崎少佐のウィンドだったからだ。
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