第27話 突然の来訪者
ごおおおおおお
宇宙空間で民間の宇宙航行船が進む。
その船内で一風変わった格好した少女が席にすわっていた。おでこに白いハチマキをして。長い黒髪をリボンでゆって長いポニーテールを揺らし。のれんのような下半分まで到達する長い真っ白な服を羽織るように着こなし。。ダボダボのはみ出した白い長ズボンを履いている。のれんのような長い真っ白な服には薔薇模様の見事な刺繍が施されていた。背中には縦文字で漢字で薔薇野囗亜(ばらのいあ)と達筆に書かれている。
のれんのような長い服の胸の部分がボタンのような繋ぎ目はなく。肌が見える程はだけていた。はだけた彼女の胸の辺りにはぐるぐると包帯のような白い晒しが巻いている。さらに胸が巻かれた辺りにはくっきりとyの字の見事な谷間ができていた。
彼女はそんなはたからみても恥ずかしずきる姿をしているのに何故か堂々と胸を張っている。
しかも船内に普通銃刀法や危険物持ち込みに引っ掛かりそうな鈍器である木刀をなぜか彼女は所持していた。
本来なら木刀のような鈍器、危険物は船内で持ち込み禁止ではあるが。武器や兵器が進んでいる別の銀河、別の惑星では近代的な兵器に原始的な武器である木刀が叶う筈もないと踏んでおり特別に許可されたのだ。そんな気遣いなど気付きもせず。彼女はすれ違いすれ違い様通りすぎる惑星人(ネヴィト)にぎらついた視線を向けてガンを飛ばしている。船内の惑星人(ネヴィト)は内心危ない人だと思い関わろうとしないというかできない。
そんな考えなど露知らず。暴走族のいわゆる特効服を着こなす彼女は宇宙船内で堂々と席に座っている。
彼女は正規の航路ではなく。乗り継ぎ乗り継ぎを繰り返していた。
目的の地に正規の航路がなく。仕方なく目的地の銀河近くまで乗り継ぎ乗り継ぎを繰り返す羽目になったのだ。全ての銀河において多大なるコミュニティを持つ地球教育機関、アースエジュケイションであるならばこんな辺鄙な地まで保護教育地を置かないで欲しいと内心彼女は不満たらたらである。
彼女は彼に逢うためだけに遥々地球のいる銀河からヘクサーギャラクシィ(六角銀河)というよく解らない銀河まで遠出する羽目になってしまったのだ。銀河同士の時間差は地球の銀河に設置してあるタイムレスト(時間差調節機)という特殊な機器でいつでも調節変更できる。故に地球に戻っても長い年月が流れて帰ってくる心配はないのだ。寧ろいつでも気軽に地球に戻ることが可能である。それでも矢張目的地の銀河まで遠すぎる。
まっ、やっと彼に逢うことができるのだ。こんなもの彼女にとって苦にはならない。
「ふふ。きっと驚くわね····。」
彼は自分が遥々地球からやってきたと知ったらどんな顔をするのだろうか?。実に見物である。
しかし、彼女は知らなかった。目的地であるアースエジュケイション(地球教育機関)の保護教育地の未開惑星には航路すらないことに。
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
パチン パチン
大翔は木の枝から木の実をとっている。取った木の実を手持ちの袋に積める。
「はあ······」
大翔は深いため息を吐く。
「きゅいきぃ····きゅいきぃ。」
隣で長い白い尻尾を揺らし。熱心にコジョ族のムムも枝から木の実を採取してる。
「何をしてる!!。手が止まってるぞ!。」
教官のように怒鳴られる大翔はネテリークから激しい叱咤を受ける。
「はいはい、やりますよ。」
大翔は全てに諦めたようにネテリークの指示に従う。
大翔は今、罰を受けている。惑星レイケットでラーメンを食べるために数日間戻らなかったことと。ネテリークに連絡とることもせず。更にネテリークの料理よりもラーメンを取ったことにたいしてかなりのご立腹である。罰として強制的に薬草積みの手伝いをさせられている。期限は一週間である。我慢するしかない。宇宙冒険者としての活動は暫くはお休みである。トホホ。
「次はコウスキの葉にベルネグの根、カオレキの球根にサクネの花びらにサボケニのトゲ。」
「そんなに一辺に言わんでくれ!。混乱する。」
本当に容赦がない。ネテリークは次々に薬草積みの課題を出してくる。
終わる気配がない。というか終わらせる気はないだろ?これ。
「ぐだくだ食っちゃべってる暇があったら手を動かせ!。まだまだ仕事は残ってるんだぞ!。」
ネテリークは眉を吊り上げ容赦なく大翔に命令する
はあ·····
ほとぼり冷めるまで従うしかない。そのほとぼりが冷める日がいつになるやら。
大翔はせっせと薬草積みにいそしむ。
「さあ、お昼だ!。弁当を用意してある。」
ネテリークが大声で俺達を呼ぶ。
ネテリークが木陰の下でシートを既に敷いており。そこに弁当が用意されていた。
どうやら薬草積みに専念(ほぼ拷問)していつのまにか時間経過したようだ。もうお昼になってしまっている。
お昼といっても飯だ!と喜べる心境ではない。何故ならネテリークが用意した料理だからである。
俺とムムは木陰に敷いたシートに腰かける。
「さあ!食べろ!。」
「······。」
ネテリークが用意した重箱の弁当箱の蓋を開けるとその生身はほぼ植物がぎっしりと入っていた。煮る焼く擂り潰す炙る茹でる浸すなど色んな料理の工程をされているが。弁当箱の中身にあるのはほぼほぼ植物であることには変わりはない。寧ろ肉類は一切入っていない。
「ネテリーク、飲み物はないのか?。ミルクでもいいんだが。」
せめて乳製品だけは身体に取り入れたい。植物性タンパク質だけじゃ限度がある。
「ああ、飲み物もちゃんと用意してある。」
ネテリークは用意していたポットを大翔に手渡す。
大翔はポットの蓋を開け口の中につぐ。
「うっ·······。」
大翔は渋い顔をして苦悶の表情を浮かべる。ポットの中身はミルクなどではない。純度が高そうな植物を煮詰め煮詰めて貯めた青汁であった。
ああ~不味い~もう一杯!とはならず。
口の中にくる苦味と渋味が混じり合い。大翔の口内を狂おしいほど汚染する。
ネテリークはそれを満面な笑みで眺めている。
ネテリーク、ここまでするんかい!。
ネテリークの大人なげない対応に俺はドン引きしてしまう。
ぐびぐび
隣でムムは美味しそうに煮詰め煮詰めた青汁を飲み干している。
おおおおおおおおお
「何だ?」
突然静かな機械音が頭上に響く。
大翔は上を見上げると見なれない宇宙船が見える。
「ネテリーク、今日、客人が来るのか?。」
「いや、そんな予定は一切ない。」
「きぃ?。」
船が何ものかは解らない。ネテリークの買った未開惑星に客人が来るなどまずない。
ネテリークの知り合いはほぼ呼ばなきゃ来ないタイプである。
遊びにくるようなことは滅多にというかほぼない。
アースエジュケイションの関係者という線もあるが。アースエジュケイションはアースエジュケイションでちゃんと専用の船でくる。
一般の船や宇宙探索船で来たりしない。
チャキ
俺はホルスターにセットしている二丁の拳銃を確認する。可能性は低くはないが。密猟者や宇宙海賊という可能性もある。宇宙生物の密猟者に関して密猟するターゲットがコジョ族も入っているから油断ならない。用心に越したことがない。
「ネテリーク、家に入っててくれ!。俺が対応する。」
「私を誰だと思っているんだ!。海賊や野盗などに遅れはとらん!。」
ネテリークは腕を組み仁王立ちする。
だが、丸腰なんだが···。
どうみてもネテリークは丸腰である。銃や携帯武器を持ったところなど見たいことがない。あくまでも原始的な農具だけである。まさか近代的兵器にたいして農具で対抗するわけないよなあ?。
大翔は悪い予感がした。
ごおおおおおおおおお
見知らぬ船は着地場所を見つけたのか。
ネテリークの家のある近くの木々のない開けた場所を着地しようとしていた。
おおおおおおおおお
見知らぬ船は開けた場所の上空に止まると静かに機械音をならし船体がゆっくりと地面に落ちていく。
ネテリークと俺は船が着地しようとしている場所に急いで向かった。
ずしゅううううう
俺とネテリークがその場所に到着している時には既に見知らぬ船は地面に着地していた。
ハッチ扉が開こうとしている。
ゴッゴゴゴゴゴゴゴッ
俺はホルスターに入って銃に手をかけ臨戦態勢をとる。
ネテリークは微動だにせず。ただ見知らぬ船から出てくる惑星人(ネヴィト)を待ち構える。
ゴ ゴゴゴ
ハッチ扉が完全に開き。そこから船の乗船者が出てくる。
「もう!何でこの惑星にどこにもステーションがないのよ!!。しかも航路すらないなんて!。不便にもほどがあるわ!ぷんぷん。」
ハッチ扉から現れた少女は勝手に出て勝手に怒っていた。
はだけた薔薇模様の刺繍が施された特攻服から見える晒しの胸が軽く揺れる。
大翔は即警戒を解く。
出てきた女の子が見知った女の子であったからだ。
地球の不良時代に世話になった暴走族のヘッド繋がりで知り合った女の子である
「火鉢、何でここにいるんだ?。」
「ああーっ!?。やっと逢えた!。全く連絡寄越さないなんて。どれだけ薄情なの!。」
火鉢という特効服を着た女の子は大翔にたいしてかなり激おこしていた。
「連絡といってもなあ。俺が世話になっている場所は見ての通り連絡手段もない未開惑星だ。連絡とりようもないだろうに。」
ネテリークが買った未開惑星に連絡手段と呼べるものはない。正規な航路すらないのだ。くるといったら希にくる行商くらいである。
「それでも連絡とらないはどうかと思うわ。アースエジュケイションに頼む方法だってあったじゃない。」
「アースエジュケイションにだけは絶対頼みたくないな!。」
保護観察されてる身の上として将来的に宇宙冒険者となってとんずらを決め込んでいるのだ。逃げるとなったら確実にアースエジュケイションに目をつけられる。ネテリークには迷惑かけてしまうかもしれないが。俺が決めたことである。これに関して絶対意志を曲げるつもりは毛頭ない。
「寧ろそっちの方でアースエジュケイションに取り次げばよかったろ。」
「取り合ってくれなかったのよ!。面会謝絶だとかいって。」
俺は犯罪者かと思ったが。よくよく考えれば暴力事件起こしているので確かに犯罪者の部類には入る。ただ扱い所がアースエジュケイションという違いがあるだけであり。少年院に入れられてもおかしくないのだ。
「お嬢ちゃん。ここでいいんかい?。」
「ええ、ありがとう。」
「なあ~に困った時はお互い様よ。」
火鉢愛音を送ったくれた船の主は気軽に挨拶した後再び宇宙に飛び立ってしまう。
帰る時、どうするつもりんだろう?と大翔は少し疑問に思った
「知り合いか?。」
ネテリークは俺と彼女が親しく話していることに尋ねる
ムムの方は何処かくりくりした円らな瞳が鋭い眼光を放ち彼女を睨んでいる。白い毛並みも逆立ってる気がする。
「ああ、俺が地球いた頃の知り合いで火鉢愛音(ひばちあいね)というんだ。」
俺はネテリークに火鉢愛音を紹介する。
「それにしても何で特攻服なんか着てるんだ?。」
大翔は火鉢愛音の容姿をまじまじと見る。何故か火鉢愛音は暴走族の特攻服を着ていた。どうみても場違いである。近代的文明がすすんでいるこのヘクサーギャラクシィで。宇宙船が航行するSFのような世界に暴走族のような勝負服は似合わないというか合わない。
「それは当然!エイリアンに舐められないためよ!。」
火鉢愛音は堂々と何の迷いもなくいってのける。
「舐められるって·····。ま、いいか。」
大翔はもう言い返すのは諦める。
火鉢愛音は言ってきくようなたまではないのだ。これに決めたと思ったら突っ込む突っ走るタイプである。
「そう言えば····ヤスの兄貴は元気か?。別れもつけずに宇宙に行っちまったから申し訳ないと思っているんだが。」
ヤスの兄貴は俺が不良時代に世話になった族の総長である。関東関西をおさめた伝説の暴走族である。
「ああ、それなんだけど。先代総長今、行方不明なの。」
火鉢愛音は少し深刻そうに語る。
「行方不明って。先代ということはヤスの兄貴引退したのか!?。」
ヤスの兄貴が引退したのは初耳である。しかも行方不明ときた。
「総長は次の代を譲って早々に引退したわ。ヤクザからもスカウトがあったみたいだけれど。それを蹴ったみたい。自分はもっとでっかい夢を目指すんだとかいって。どっかに旅立ってしまったの。慕っていた舎弟達が日本人中探し回ったけど。総長は見つからなかったみたいよ。」
「あの人相変わらずだな······。」
ヤスの兄貴は昔っから自由奔放なところがある。自分が言えた義理でもないが。
「それより私、今、薔薇野囗亜(ばらのいあ)という名のレディースで総長やっているのよ!凄いでしょ!。」
火鉢はえっへんと晒しを巻きつけたyの字がみえる谷間を堂々とみせつけるように胸をはる。
「谷間見えてるぞ。」
「えっちぃ!。」
さっ
火鉢は恥ずかしそうに晒しの巻いた胸を隠す。
えっちぃって·····。だったらそんな格好するなよなあ·····。
大翔は半場呆れ顔で火鉢に冷めた視線をむける。
特攻服を着るのは解るが(いや解らんけど)。素肌をさらけ出す意味が解らん。
「キィー、大翔、気をつけて!、この女ちじょだ!。地球の言葉で知った。大翔に悪い蟲がつく。しっ!しっ!しっしっ!。」
痴女という言葉を何処で覚えたのか知らんが
ムムはあっち行けといった感じで火鉢愛音を激しく拒絶する。
「何、この白い毛むくじゃら?。」
火鉢はムムを見て女の子らしからぬ感想を延べる。普通は萌えるとかもふもふとか言って可愛がるものだが。彼女にはそういった感性はほぼない。
「キィー!お前敵!。絶対敵!大翔に近づくな!。」
何故だかムムは火鉢を敵認定してしまう。
「ま、まあっ、折角来たんだから手伝ってくれ。」
「手伝う?。」
火鉢はキョトンとした不思議そうな顔で大翔を眺める。
普通は客人をもてなすのだが生憎俺にはそんな余裕はない。
作業効率をあげるためにも大翔は悪賢く企む。大翔はニヤリと不適な笑みを浮かべる。
「薬草積みだよ。」
▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩
地球から遥々やって来た不良の知人である火鉢愛音に薬草積みを手伝わせることを大翔は企む。
次回 社会不適合者の宇宙生活 上等‼️
第28話
『やりたいこと。』
不良少年は荒波の海へと飛び込む······
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