第22話 無気力の怠惰

ぶおおおおおおおーーーーーー


銀龍号を操作をし。宇宙空間を移動する。

ネテリークの依頼でとある植物を六角銀河(へクサーギャラクシィ)の一つ北西銀河ラビンクにある惑星レイケットを送る仕事を頼まれたのだ。

大翔はウキウキ気分で銀龍号のハンドルを握る。


「キィ、大翔、何か嬉しそう。」


ムムは普段の大翔とは違う態度に白く長い胴体の何処から首なのかかわからない首を傾げる。


「ああ····ラーメンが喰えるんだ。まさかこの辺境の銀河でラーメンが食べれるとは思わなかったよ。」


大翔は嬉しそうにに口元が緩む。


「ラーメン?。」

「麺という水と小麦粉で伸ばしたものをスープに漬け込んで食べる料理だよ。久しぶりに料理という料理が喰えるよ。」


ネテリークが作る料理は殆んど植物全般である。乳やチーズなど一応でるが。肉類は殆んど言っていいほどでない。乳をだす牛のような動物や卵を産むニワトリのような生物はいるが。肉用の家畜は育てていないのだ。だからいつも食卓に出る料理は植物全般なのである。しかも煮る、焼く、浸すなど料理のバリエーションもそんなに多くはない。正直野菜類だと栄養かたよるんだが。ネテリークは地球の惑星人(ネヴィト)である俺を気遣ってビタミンやたんぱく質の含まれた高性能なサプリメントをくれるが正直全然嬉しくない。まともな料理がたべたい。

そんなときにネテリークのお使いにまさか地球のしかも日本で修行してで出戻った惑星人(ネヴィト)のラーメン職人がいるとは思わなかった。

久しぶりに地球のラーメンが喰えるのだからこれほどうれしいことはない。

この際味がなんてどうでもいい。久しぶりの地球のラーメンが喰えるなら本望である。


ぶおおおおおおおおおお


「キィ、ライナ、見えたよ。あそこ、惑星レイケット。」


コクピットの前方に少しの緑とその殆んどが茶色味がかった惑星が見える。

見た目からしてどうやら森林の豊富な自然豊かな惑星ではないようだ。海もなさそうである。惑星全体からして岩だらけの多い惑星のようだ。例えるなら西部劇の荒野が連想するだろうか?。


「こんなところでラーメンを作っているんだな。」


まあラーメンを何処で作っていようが構わない。喰えれば何だっていい。


「降りるぞ。ムム。着陸の準備をしろ。」

「キィ。」


大翔は銀龍号のハンドルを前に倒す。

ゆっくりと銀龍号の船体が傾く。

銀龍号の先端が惑星レイケットに向けられる。

銀龍号から透明な膜が船体を覆う。


「では惑星レイケットにいざ!」


大翔はペダルを力強く押し付ける。


バサッ ぶわああああーーーーーん!


惑星レイケットの大気圏を突っ切ると。そこは岩岩が並ぶ荒野の風景が広がっていた。

水、というか海そのものがなく。森林も数少ない。正に西部劇に出てきそうな惑星である。

ここにガンマンやマンドリンを弾いた音楽家がいたなら正に西部劇の惑星である。

まあ、住んでいるのが惑星人(ネヴィト)ならそうはならないだろうが。


「キィ、大翔、サーチマーカーに反応あり。目的の場所が近い。」


どうやネテリークが指定した人物の居場所をムムのサーチマーカーが察知したようである。サーチマーカーは目的の人物を探すのにも便利な道具のようである。親しい人物をマーカー(マーキング?)することで瞬時に惑星内で何処にいるか探しだすことができるのだ。

そう言えば地球にもマイクロチップを埋め込んだ身分証明書ようなものが昔あったな。

あれも色々問題があった。

特にストーカー被害にあっているものにそのストーカーがマイクロチップのID情報を得ることで。何処にでも意中の相手を探しだすことが出きてしまい。再犯が起こって社会問題となってしまった。

セキリュティを強固にすれば問題ないと思われるが。そのストーカーが凄腕のハッカーだったのだから目もあてられない。

他にも毒親に虐げられた子が絶縁してマイクロチップの情報を親族だからといって役所で得ることができてしまい。金の工面とかでしつこく付きまとわれることもあったようである。

ニュースで放送されていたがあまり興味がなかったのでスルーして聞き流していた。

マイクロチップは便利な方面もあるが危険な方面もあるのだ。肉体にチップを埋め込められるとそう簡単に取り出せない。第三者が情報を得てしまうと縁切りしたいものにとってはかなりの脅威である。




おおおおおおおおおおおおーーー


サーチマーカーを辿ってとある村の集落を発見する。この惑星レイケットでは人が住んでいるのはどうやらこの村だけのようである。他にも都市や町が見当たらない。この惑星レネテリークの人口はそれほど多くない。情報では惑星レイケットは鉱物資源が豊富な惑星のようで。鉱物であるネファイナという装飾用の鉱石を採掘しているらしい。しかしネファイナという鉱物はそれほど価値は高くなく。1キロでも雀の涙ほどでしかなかったという。この惑星レイケットでは昔はかなり貧しかったらしく。この惑星レイケット出身の鉱夫が深夜0時過ぎまで残業するほどだったらしい。

しかしそれは昔のことで、今は1人のこの惑星出身である宇宙冒険者によって改善したらしい。


俺はそこの住人であるエネベさんにネテリークに頼まれた植物を送り届けなくてはならない。そして本命であるラーメンを喰いにいくのだ。ネテリークのお使いはそのついでである。ネテリークにその本心を伝えたら怒られるだろうが。


すうううううううううーーーー ドシ


銀龍号は静音を鳴らしながら静かに惑星レイケットの地上へと着陸する。

カチャ

コクピット席のベルトを外す。


「さて、ムム。ネテリークに頼まれた植物を送り届けよう。その後、ラーメンだな。」

「キィ。」


ぶおおおおお

銀龍号の下から上へと開くハッチ扉が開かれる。

目の前には赤々と染まった岩山が広がる。

岩岩の広がる岩山の地上に草のような丸い球体がコロコロと転がっている。

正に西部劇のような風景である。

暁に染まった夕焼けがこの大地を照らしたらかなりの絶景であろう。

大翔とムムは銀龍号から出る。

ハッチ扉は自動で閉じる。


「それじゃ、行こうか。ムム。」

「キィ。」


っ!?。


ギューーーーーーーいん


突然大翔とムムの目の前に宙に浮く二体の小型のロボットが出現する。

大翔は少し身構えたが、この惑星レイケットのセキュリティロボットかもしれないので即座に警戒を解く。

二体のロボットの一体はスキャンサー(走査機)ような赤外線の光を放ち。頭部から足元まで満遍なくスキャンする。


『体内二残存スル病原菌ノ痕跡無シ。武装ヲ確認。身分ヲ証明スルモノヲ提示シテ下サイ。』


自動的に発音する二体のロボットの一体が発する。

身分を証明するものか。生憎俺は宇宙冒険者として資格証、身分証を持ち合わせていない。アースエジュケイション(地球教育機関)の保護観察を受けている身の上だ。教育者としてネテリークに特別に宇宙を旅立つことを許されている。実際アースエジュケイション(地球教育機関)にこの事がばれたらかなりヤバイ案件だろう。


「キィ。」


ムムは堂々と小さな白い手から宇宙冒険者のライセンスを提示する。

ビィーーー

ムムが提示した宇宙冒険者のライセンスを小型のロボットの一体がスキャンする。


『確認完了シマシタ。宇宙冒険者ムム。何ヨウデコチラニ参レタノデスカ?。』

「キィ、お使い頼まれた。植物をここの住人のエネベさんに届ける。」

『用件ヲ確認シマシタ。ヨウコソ惑星レイケットへ。ナニモナイトコロデスガ。オクツロギクダサイ。』


ぶぃいいいいいいーーーーーー


二体の小型のセキリュティロボットはそう告げると何処かに去ってしまう。


「俺は確認しなくていいのか?。」


自分だけは身分を確認して貰っていない。


「キィ、宇宙冒険者という職業1人確認出来たら充分。宇宙冒険者という職業は責任重大。他の惑星で悪行起こそうものなら即ギルドに報告され。ライセンスが剥奪されて取り消しになる。そして重い罰が下る。」



なるほど。宇宙冒険者は他の銀河や惑星で犯罪まがいなことをすると即処分されるんだな。荒くれ者が多い宇宙冒険者だがここに関してはしっかりしているようだ。

そりゃあ宇宙冒険者が我が物顔で銀河の星ぼしに問題起こせば探索や。企業とかの取引が出来なくなり。商売にどころではないだろう。宇宙冒険者という職業はより重い責任が伴うのだと大翔はしみじみと感じた。

大翔とムムは村の集落へと入る。木造建てで原始的というかほぼ西部劇である。


ざっざっざっ


「何だこれは?。」


惑星レイケットの村の集落に入ると大翔とムムは木造建ての家々で椅子に腰掛けくつろぐレイケットの住人の様子が目に入る。

しかし惑星レイケットの住人は何処か異様であった。言葉で表すなら魂を抜けたようにダラケきっているのだ。

商売を行う店の店主さえもまるでやる気がなさそうに椅子に腰掛けダラケきっている。




そんな異様な光景に大翔は少し訝しげに眉を寄せ困惑する。


いつも宇宙航行で立ち寄る惑星の村や町の住人は生き生きさと活気さが満ち満ちていた。しかしこのレイケットの村の住人にはそれが皆無である

皆やる気無さそうにダラケきっている


「キィ、大翔。この村、何かおかしい?。」


ムムは小さな白い獣耳をピクピクさせ。何処が胴体か首かわからない首を傾げる。


「ああ···確かにな····。」


この惑星のレイケットの村では当たり前なのだろうか?。

大翔はお使いの途中ではあるが、少し気になり。ちょっと店番しているだらけきっているレイケットの惑星人(ネヴィト)の店員に声をかける。


「おい、あんた?。」

「んあ?。」


惑星レイケットの惑星人(ネヴィト)の店員は店のカウンターで目が虚ろげにさ迷う。店員なら敬語で対応するのだが。それさえも面倒臭そうにしている。


「何でこの村の住人はこんなにもだらけきっているんだ?。店もまるでやる気なそうだが。」

「ん?ああ、そりゃあ俺達はもう働く必要性がないからな。」


店員は少し自慢げに呟く。


「働く必要性?。」

「ああ、俺らはこの惑星で昔、唯一とれる鉱物サファイナで生計を立てていたんだ。安っすい鉱物の売買でいつも貧しいくらしをしてたんだよ。しかしここで救世主が現れる!。今活躍するレイケット出身のS級宇宙冒険者、ネガイミ・シルヴァーミさ。彼女がエヴェルティア(未確宙領域)で次々に資源がある未開惑星を発見し。その稼いだお金を彼女は故郷であるこの惑星レイケットに寄付したんだ。そして俺達は裕福になったのさ。だから俺達はもう無理して働く必要性がないのさ。」


レイケットの惑星人(ネヴィト)の店員はまるで自分事のように自慢して嬉しげに語る。


ふ~ん、働く必要性がないねえ····。

大翔は村でだらけきっている住人に視線を巡らす。

にしてはみんな全然生き生きしていないんだが·····。

お金が沢山入り裕福になっている筈なのに惑星レイケットの住人は何処かやる気なく無気力である。


「エネベさんはという人を知ってるか?。」


サーチマーカーで探すことは可能だが。どの家にいるかは解ないので店員に聞いてみる。


「エネベ?ああ、ガーデニングを趣味にしている変り者ね。それならあの家だよ。」


店員は指を指す。

座した指の方向には家々から少し離れた一件家が見える。

そこだけ少し緑が多い気がした。


「ガーデニングが趣味だけど。農作業ロボットやガーデニングロボットを使わず。わざわざ手作業でする変り者だよ。」


店員は何でわざわざ重労働な手間暇かかるような手作業なんてするのかと首を傾げる。


「感謝する。お礼に何か買おうか?。」


「あ、いいよ。いいよ。気を遣わなくて。俺らは店を構えているだけで。ただのふりだから。真面目に店番している訳じゃないから。」


レイケットの店員はカウンターに上半身を預け手を払いながら適当に断わりを入れる。

··········


「それ、楽しいか?。」

「ああ?」


大翔の一言に上半身をカウンター机に崩すダラケきっている店員は訝しげに眉を寄せる。


「いや、聞いてみただけだ····。」

「?。」


大翔はそう告げるとそのまま何も言わずに店を去る。


ぴょんぴょん

「キィ、大翔。」

ムムは心配そうに俺に声をかける。


「まあ、この惑星が何を生き甲斐にするかは勝手だが。生き甲斐その物を無くすとはな。」


大翔の生き甲斐はスリルを追い求めることだが。惑星レイケットの住人はそれすらもなくしまったようだ。働く必要性のないほど裕福だろうが。そこに生き甲斐というものが一切感じられない。自堕落という言葉がふさわしいのかもしれない。


大翔とムムは村から少し離れた一軒家に辿り着く。

早くネテリークのお使いすませ。目的であるラーメン屋に向かおう。

大翔はインターホンらしきものに手をかざす。ここの銀河のインターホンはプッシュ式ではなく手をかざすだけですむらしい。便利なものである。


『はい、どちら様ですか?。』


家主の声が何処からか流れる。


「エネベさんですか?。ネテリークから使いを頼まれたものです。植物を送り届けにきた。」

『あら?ご苦労様。遠慮無く裏庭に来てください。私は裏庭におりますので。』


大翔とムムは家に入らず裏庭に回る。

そこにはほどよい紫波を帯びた老人が花に水やりをしていた。


「エネベさんですね。」

「ええ、ご苦労様です。」


エネベという老人はニッコリと微笑む。


「どうぞ。ネテリークに頼まれた植物、ハルマーニです。」


大翔はネテリークから頼まれた苗木を渡す。

ハルマーニはよい香りを放つ香水花と呼ばれる特殊な植物らしい。婦人に人気があるらしい。興味はない。今はラーメンである。花より団子である。


「ご苦労様です。ここまで遠かったでしょ。お茶でもどうですか?。」

「いえ、俺は惑星レイケットでラーメンを喰いにきたんです。」

「ラーメン?。」

「はい、何でも地球の日本でラーメン修行してで戻った惑星レイケットの惑星人(ネヴィト)がいるそうで。」

「ああ、ジオッスのことね。まだラーメンやってたかしらねえ。」

「ラーメン屋がある場所を知っているなら教えて貰いたいんだが。」

「ならついてきて。」


エネベさんから後をつていき。裏庭から表へとでる。


「あの赤い建物よ。ここからでも解るから。」


エネベさんの言うとおり解りやすく村の中に赤い建物があった。



「でもまだラーメンやってたかしらねえ?。」

「それじゃ、俺達急ぐんで。」

「キィ、ありがとう。」


俺とムムは急いで赤い建物であるラーメン屋に駆け出す


「あらあら、忙しいのね····。」


エネベはそんな二人を微笑ましげに見送る





「ここが惑星レイケットのラーメン職人がいるラーメン店か····。」


建物が作りがここだけ違った。日本の昔ながらの木造建てのラーメン屋を醸し出していた。

看板には日本の漢字で豚楽亭(とんらくてい)と書かれている。豚となんらかの関係があるのだろうか?。


「それじゃ、いよいよラーメンを喰うぞ!。」

「キィ!。」


大翔とムムは勢いよく引き戸である豚楽亭の玄関ドアを開ける。


ガラガラ

「ごめんください!。」




▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩▩


惑星レイケットで目的であるラーメン店を大翔は発見する。しかしそこでとある問題が浮上する。



次回 社会不適合者の宇宙生活 上等‼️


第23話

     『ラーメンの想い』


不良少年は荒波の海へと飛び込む······

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